【ヒプマイ】私はただのオネーさん【飴村乱数】

スイート ページ46

「はぁ、はぁ……」


……逃げて来ちゃった。

どうしよう。


スマホを見るとたくさんの着信履歴。


こんなこと初めてだ。

前は女の人といてもなんとも無かったのに……ううん、我慢出来たのに。

今は……嫌だ。

我慢するのも、嫌だ。


けど、こんなの……可愛くないな。


せっかくオシャレもして、プレゼントも用意して、チョコだって作ってきたのに。

これじゃあ、意味無いよ。


「乱数……」

「見つけたっ」

「！」


乱数。


「待って逃げないで。A」


ここが路地だからなのか。

私を引き止めるためなのか。

地声で私の名前を呼んだ。


それに思わず体が止まる。


「あ……あのね、乱数、私」


顔、見れない。

見られたくない。


「僕、今日君のためにオシャレしてきたんだけどなー」

「え、そうなの？」


それは見たい。

そういえばさっきの子たちもそんな話してた。

動揺してて見てなかった。


「でもAが嫉妬するなんて珍しいねっ。しないのかと思ったから、びっくりした」

「するよ！」


乱数に向き直ってハッキリ言う。


「今まで言ったこと無かったけど、乱数が他のオネーさんといるの嫌だし、前に言ってた望んだらそれ以上、のこと……ってやつも、考えると嫌で……今日だって、もしも私が乱数の彼女じゃなかったら前みたいに他のオネーさんと一緒に歩いてたのかなって考えるし、本当の本当は……！」


口が、塞がれた。

それは恋人同士がやる、特別な形で。


「……甘い」

「チョコ味の飴だよっ。美味しい？」

「うん」


惚けたのは、突然だったことと。

乱数のその一つの行動だけで、心が浄化されていくようだったから。


景色が、キラキラになったから。

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