理想の息子 8

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□海side□

その日の夕方、私は小林さんの家を訪ねた。

光子「裁判？」

海「ええ。病院の手違いなんですから、責任の所在といいますか。」

光子「私はそんなことするつもりはないの。」

海「どうしてです？」

光子「病院は行政のせいにするでしょうね。慢性的な看護師不足が原因だと。

国はなかなか認めないでしょう。すると、裁判は長くなり弁護士料もかさむ。」

海「弁護士料…。」

光子「私は実の息子が帰ってくればそれでいい。あなたは違うの？」

海「いえ…私も、それは。」

光子「でしょ？血は水よりも濃いものね。」

海「ですけど、なんか納得がいかないっていうか。」

光子「それは、私も同じだけど。」

海「正直…損した気が。」

光子「できのいい息子を取られて不満？」

海「実の息子でないなら仕方ないとは思います。でも、育ててきた私としては…。」

光子「いつかお家を買ってあげる。そういう約束をしたらしいわね。」

海「あぁ…。そんな話まであの子…。」

光子「私が提供します。」

海「えっ？」

光子「確かに、不公平なトレードなら金銭をプラスするものだわ。

マルコバには寝かせてある不動産がたくさんあります。

庭付きの一戸建て？いいでしょう。至急、資料をお渡しします。」

海「いえ、私は別にあなたに…。」

光子「私も育ての親として情はあるの。

実の息子じゃないあの子にも、“これからは安アパートでつましく暮らしなさい”さすがにそんなふうには言えないわ。」

海「バカにしないで。別に貧しくても…。」

光子「だって嫌なんでしょ？あなたは。だから息子に家を。」

海「貧乏が好きな人などいますか！？」

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