理想の息子 7

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□Aside□

海さんは鞄の中から小切手を出した。

A「それ…。」

三船「どうして受け取ったんですか？そんなもの。」

海「慰謝料とこれまでの養育費にって。３０００万の小切手よ。

こんなもの出されたら貧乏人は目がくらむわ。念願の家が買える。

小さいけど郊外なら、中古で手に入るかも。」

三船「それで息子を手放してもいい？本気じゃないですよね？」

海「もともと、いい母親じゃないの。たかが浮気ひとつで息子から父親を奪うような女よ。

貧乏暮らしさせて、おもちゃもまともに買ってあげたことないの。

自分の意地や見栄や…プライドばっかりで。母性本能が薄いのね。冷たい女なのよ。

出産前に“ちゃんと母親になれるのか”ってお医者さんに聞いた時…カンガルーケアっていうの勧められたんだけど。

生まれたてのあの子抱いても…考えるのはこれからの暮らしのことばっかり。

かわいいとか思わなかった。自分の心配ばっかりで。」

海さんは泣いていた。






□大地side□

大地「ごめんね、変なお芝居させちゃって。」

倉橋「いや、分かるよ。これ以上お母さんを惨めにしたくなかったんだろ？

立派だったと思うよ。」

大地「いや、ホントは違うんだ。」

倉橋「うん？」

大地「こんなこと母ちゃんには言えないけど、一度でいいから俺もキャッチボールしてみたかったんだ、父ちゃんと。」

倉橋「そっか。」

大地「今日はありがとね。」

俺は実さんと別れ、学校に向かった。

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