夏祭りと初恋の君 �� ページ6
案外、すぐに勘右衛門たちは見つかって、東條さんと俺の二人っきりの時間は終わった。
『あっ、咲〜！！』
「ごめんねぇ〜！」
二人のとき、浴衣似合ってる、の一言も言えなかったことを悔やんでいると、後ろから、三郎たちが話しかけた。
「いいか、八左ヱ門。私たちは今からわざとお前たちから離れる。いいな」
「………おう！」
勘右衛門は浜崎と回るようで、腕を組んで屋台の方へ向かって行った。その後は、すぐに三郎たちはいなくなって、また、俺は東條さんと二人になった。
『あれ…またはぐれちゃったね…』
「そうだな…… なぁ、もうこのまま一緒に回らない？ また探すのも手間取るし…どう？」
『…わ、私でよかったら…』
綺麗に結ばれた髪から、真っ赤に染まった耳が見えた。それは、俺は《期待》していいってことだろうか。
あっという間に夢のような時間は終わってしまって、告白なんてすることもなる鳥居の前に戻ってきた。兵助たちも居て、告った？と、耳元で聞いてくるものだから、無言で首を横に振れば意気地無し、と頭をこづかれた。
「僕たちもう帰るけどさ、八左ヱ門、東條さん送っていったら？」
「あっ、いいじゃあん。帰り道は暗いしねぇ〜」
「お前どうせ自転車だろ？ 送っていけよ」
『＿＿＿いいよ。別に』
雷蔵たちに押されて、浜崎までがそう言っていた中、東條さんが別にいい、と言った。拒まれたのだ。時が止まったかと思った。
「えっ…でもA。一人は危ないよ？」
『いいって、迷惑だし…』
「べ、別に！ 俺も全員迷惑じゃないし」
『別に送らなくていいよ。帰り道一人じゃないし』
「えっと〜それ、私だったりする？ ごめんけどぉ、私勘右衛門と帰るんだよねぇ…」
『ううん、咲じゃないよ』
もしかして、それ、彼氏？ 喉元まで出かけた疑問が口から出ていかない。知りたい。いや、知りたくない。東條さんの隣に居る奴を。
「えっ…それってぇ…」
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作者名：雪村燐 | 作成日時：2022年2月27日 10時
