脇目も振らない話 (ページ22)

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呪い 3 ページ22

今まで我慢していたモノが、感情が一気に込み上げてくるのを感じた
目頭が熱くなる

ダメ、だめだよ。私
我慢するんだ。ここで泣いたら、ダメ
唇をかみしめて必死に耐える
だけどその努力は数秒も持たなかった

ポタッ、ポタッ
と地面に染みを作っていく
あぁ、やってしまった
とうとう泣いてしまった

目の前のシンタローが息を呑む音が聞こえる
驚くよね、いきなり泣き出すんだもん

貴女「ごめっ…」

謝ろうと口を開いた瞬間
ふわりと優しく包み込まれた

シ「嫌だったら突き飛ばしてくれ」

そう言いながら少し抱きしめる力を強め、優しく背中を撫でる
『大丈夫。大丈夫だから』と言って撫でてくれる

突き放さなきゃ
そう思うも動けない
これ以上近づいたら、本当に離れられなくなるのに

でも、その優しさに触れていたくて
貴方の体温が、鼓動が心地よくて
私はギュッと背中に腕を回した

これで、これで本当の本当に最後にするから
終わりにするから
…と自分に言い訳をしながら

＊＊

どれくらい泣いていただろう
どれくらい抱きしめ合っていただろう
数十秒のような気もするし、数分のようなような気まもする
もしかしたら数十分かもしれない

貴女「ご、ごめん。もう平気、だから」

回していた腕を離し、離れようとする
これで最後。もう忘れる
縛り付ける呪いに変わってしまう前に

貴女「ありが………」

"ありがとう"そう言い終わる前に
離れ終わる前に
もう一度。今度は先ほどより強く抱きしめられた

刹那ぼそっと小さな声で呟いた

シ「……………好き」
貴女「…え」

もしかしたら都合のいいように捉えた聞き間違いかもしれない
幻聴なのかもしれない

だって、そんなこと
『好き』だなんてこと
そんなことが、あるわけがない

この状況で『好き』なんて言われたら
誰だって恋愛的な意味で捉えてしまう
勘違い、してしまう

シ「好きだ」

今度は先程よりもハッキリと聞こえた
…いよいよ私、やばいのかな
こんなにもハッキリと幻聴が………

シ「A」

今度は名前を呼ばれ、思わず肩が上下してしまう
愛おしそうに、私の名前を呼ばないでよ
そんな、大切な人の名前を呼ぶみたいな声で呼ばないでよ