脇目も振らない話 (ページ18)

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初恋 3 ページ18

シ｢何してんだよ｣

ピタリと手の動きを止める
…やばい。とうとう幻聴でも聞こたんじゃないのか？と最初は疑った

シ｢おい、無視かよ。それとも狸寝入りか？｣

近づく足音
ドクンドクン、と波打つ私の鼓動
…どうしよう。完全にタイミング逃した

シ｢もう用事済んだのか？｣

その声とほぼ同時に足音が止まる
そして何故か目の前にシンタローの顔があった
……こちらを覗き込む形で

貴方｢！？！？？！｣

驚き過ぎて声も出なかった
何やってんだ、コイツ。馬鹿か？私の気も知らないで

シ｢そんな驚くなよ。さっきから声掛けてただろ｣
貴方｢いや、えっと…幻聴かと思ってまして…と言うか先に帰ったはずじゃ…｣

幻聴と聞き『何言ってんだコイツ』みたいな顔をされたが、まぁそこは置いておこう

シ｢忘れ物取りに来たんだよ｣

ほら、これ。と言って机から取り出したのは財布だった
財布なんか忘れるなよ、と1人心の中で突っ込む

貴方｢へ、へぇ〜｣
シ｢で？Aは？先生に呼び出されてんじゃねぇーの？もぅ終わったのか？｣

どうしよう。なんて言い訳しよう
どんな言い訳してもシンタローには見透かされてしまいそうで、怖い
いや、そもそも先生に呼び出されてると言う嘘も絶対見破ってるよ、この感じだと

シ｢…やっぱ嘘だったんだな、あれ｣
貴方｢えっと…あははは｣

もうこれは騙しきれない。そう思い笑って誤魔化した

シ｢笑って誤魔化すな｣
貴方｢いだっ！？｣

軽くチョップされた。いや、軽くじゃない
結構痛かった

シ｢……何か悩み事か？｣

私の前の席に腰掛ける
横を向きながら心配そうに聞いてきた

貴方｢……………まぁ、うん｣
シ｢なんだよ、その間は｣

嘘をついても見破られるだろうし
恋してるんだよね〜と言っても相手がシンタローなら解決はしない
だから曖昧に濁したのだが

シ｢オレに言いにくい事、なのか？話ぐらいなら聞いてやるけど｣

やめて。やめてよ
そんな優しい事、言わないでよ
折角諦めようとしてたのに

貴方｢シンタローには分からない問題だよ｣
シ｢…ふーん｣

可愛げない私
でも、そうでもしないと苦しさが紛らわせなかった

シ｢…あんま辛かったら誰かに相談しろよ。オレが嫌なら親にでもいいし、それか…アヤノだったら親身になって聞いてくれると思うぜ？｣
貴方｢…うん。ありがと｣