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2話 ページ2

夏目「それで、俺に何か用ですか?」

訝しげに見ると、彼女はまた悪戯に笑う。

「そう警戒しないで。私、高校2年。夏目君と同い年ですよ」
夏目「そうなのか。で、的場当主の妹が、俺に何の用だ?まさかまた勧誘?俺は入らないよ」
「ええ。承知ですよ。その事ではありません。私的なことです。ですから、この頼みは聞かなくても構いません」

コーヒーに視線を落とす彼女は、陰りがあり、何か訳があるように思った。

夏目「話なら聞くよ。どんなお願いなんだ?」

唇をきゅっと結び、言いにくそうに何度か口を開いては閉じ、開いては閉じ。そして、ギュッと目を閉じて、意を決した用に懐から紙を取り出した。

夏目「書道展覧会?」

予想の斜め上の紙に、目を凝らして見た。少しくしゃくしゃになった入場券だ。すると、肩に重みがーー。

「なんだ。書道展覧会か。てっきりパフェ食べ放題の券かと思ったのだが」
夏目「ニャンコ先生!?」
「そこの小娘、生意気にお前と同じくらい見えているぞ」
「あら、ブサカワな猫さんですね。夏目君が飼っているのですか?妖怪のようですが」

口許に手を当て品定めするように笑った。ニャンコ先生は酒の臭いを漂わせてケーキを貪った。

夏目「先生!行儀悪いぞ」
先生「で、何用だ?」

先生の目が黄色にキラリと光った。それを、ほぉと感心したように見て、俺に視線を戻した。

「面白い妖怪と契約をされてるのですね。では、本題に入らせていただきます。これを、兄に渡してほしいのです」

目が点になった。先生も訝しげに彼女を見た。

夏目「兄妹なんだよね。なら、直接的場さんに渡したらいいんじゃ」
「当主にはたとえ血縁者でも会ってはならないのです。当主は代々右目を狙われます。その妖怪は、いつやって来るのか、分からないのです。それなのに近づけば、私が的場にとって弱味になってしまうかもしれない。妖怪に弱味を握られるかもしれない。そのことを危惧し、小さい頃からあまり顔を会わせませんでした」

関わりたい存在で、頼りたい存在で。それなのに彼女は、近づくことさえ許されないなんて。

「故に、兄の足手まといにはならないよう、あまり近付かなかったのです。しかし、どうしても諦めきれず。的場家は表向きは書道家としても有名なので、そちらは私が継いだのです。なので、書道家としての展覧会をよく開催しております。兄には今回は来てほしいのです。今回だけは。今回だけは来てほしいのです。どうか渡して頂けませんか」

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作者名: | 作成日時:2020年10月25日 10時

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