Fortitude.【CS】 (ページ36)

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▷過去

南雲杏姫。

彼女は星が綺麗な夜、母、父、兄の暖かい家族に見守られこの世に生まれた。

彼女は家族が誇りであった。

父は中学校の音楽教師。
頭が良く杏姫自身に勉強を教えてくれたり、音楽の楽しさを教えてくれたのは、他では無い彼女の父ー南雲千彩ーである。

母は管理栄養士。
とても美味しいご飯を食べ、食べることが大好きな今の杏姫が出来上がったのは、他では無い彼女の母ー南雲満月ーのおかげである。

兄は5つ離れている。
とても優しく、勉強や運動、友人関係まで何もかも完璧な杏姫の憧れは他では無い彼女の兄ー南雲奏征ーである。

そんな家族に恵まれたが、彼女は幼い身で自分の才能の無さに気づいていた。

それでも彼女の家族がとても褒めてくれるため、心配させるまいといつも笑顔でいた。

ただそれは偽りでは無い、ただただ家族と共にしているのを楽しんでいる純粋な笑顔である。

小学校に入った頃、それは起きた。

たった一言。たったの一言で彼女はすっかり自信を無くし、人を避けるようになってしまった。

子供の言うことだ。

相手の子にはもちろん悪意はないのだが、元々気にしていた杏姫にとってはとても辛いものだった。

杏姫も最初はそのままでいたのだが、段々とガタが出始め自然とその子が怖くなってしまった。

それ故に人と関わるのが苦手になってしまう。

その結果、杏姫は人を避けるようになった。

また、周りの人も“優しさ”から杏姫と関わらなくなってしまう。

その厚意に、杏姫は気づいていたが自分のわがままのせいで周りに迷惑をかけてしまったという申し訳なさから、学校に居づらくなってしまう。

そのことは1度母と話した。

が、もちろん母はそのことを反対した。

親として当然のことをしたまでだが、杏姫にとってはとても辛く感じていた。

母は「学校には行きなさい。相談もフォローも何でもするから、お願い。」と杏姫に言った。

家族が大好きな杏姫はそこからただの作業かのように学校に行くようになった。