無限の未来 17th season (ページ50)

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850話ページ50

青「ほら、行っておいで。上がったら髪の毛、乾かしてあげるから」

「うん…ありがと」

あれから、樹はあれ以上なにを言うでもなく、何か詮索するわけでもなく、私をお風呂に送り出した。

お風呂に入って、1人になると、別になにを思うわけでもないけど、ポロポロ涙がこぼれて、どうしたらいいのか分からなかった。

流れる涙を、シャワーで見ないふりして。

…疲れてんのかな。

青「A、そろそろ上がりなねー？…A？ごめん、入るよ？」

少しだけ焦ってる樹の声が聞こえた気がしたけど、だからどうっていうわけではなくて。

ただ、涙が流れてくるのを、止めるのに必死になってるだけ。

青「なぁに。のぼせた？」

「んーん、ちがっ…」

青「とりあえず出よっか。風邪ひいちゃう」

小さなくしゃみがひとつ出たら、ほら～って、大きなタオルで私を包みながら笑う樹。

そんな些細なことにさえ涙腺が緩んで、ポロポロ涙が流れてしまう。

幸い、鼻を啜っている音はドライヤーの音がかき消してくれたはずだから、これが終わるまでに止めなくちゃ…そう思うのに、そんな簡単には止まってくれないみたい。

青「色んなこと、思い出した？」

「…グスッ」

青「勇人くん、心配して俺にLINE送ってきてくれたのよ。なに思い出したん？」

「…別にな、何をってわけやない。今までのこと、全部。嬉しかったことも…悲しかったことも、楽しかったことも、苦しかったことも…ッ」

泣いちゃダメだって、思えば思うほど涙を止めることができなくて、だんだんと、真っ白になっていく私の頭の中。

別に今日、嫌なことを思い出したわけでもないのに。

青「ごめんごめん。多分ね、A。嫌なこと思い出してなくても、今日は頭使いすぎたんだわ。明日、北斗に起こしてって頼んであるし、ゆっくり寝な」

「樹ぃ…」

青「ん？どした、どしたぁ？」

「朝まで、一緒にいて…」

最初は、ビックリしたのか戸惑って、困った顔をした樹だけど、すぐに笑顔になって、“おいで”と手を引いてくれる。

青「考えるのおしまい。全部投げ出して寝よ」

北斗が起こしてくれる頃には、すっかり広島に向かう準備ができていた。