無限の未来 17th season (ページ46)

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846話ページ46

デビューまであと2ヶ月と少し。

これまでのことと、今の気持ちを聞かせて欲しいと言われ、今日はスタッフさんに1日付き合ってもらうことになった。

ス「ごめんね、急に。大丈夫だった？」

「いえいえ。他のメンバーみたいに、いい感じになるかわかんないですよ？」

密着が始まって、もうすぐで半年。

スタッフさん達ともだいぶ打ち解けて、少し込み入った話もできるようになった。

グラウンドの、懐かしい光景。

あの時の私たちと同じように、たった一つの目標に向かって、歯を食いしばる姿。

ふと、こちらに気づいた選手が元気よく挨拶をして、駆け寄ってきてくれる。

「お疲れ様。元気やった？」

選手「はい、おかげさまで！監督、呼んできますね」

今でも、仕事の都合がつく限りは定期的に顔を出したり、やかましく動き続ける同期の連絡網のお陰で、母校の情報はしっかり把握している。

ランニングから戻ってきた選手が、続々とグラウンドに戻ってきて、私を見つけては、“デビューおめでとうございます！”って声をかけてくれる。

一緒に野球をしたことがなくても、年がいくつ離れていても、消えないこの関係が好きだ。

練習の終わったグラウンドへ足を進めれば、土の匂いが鼻を掠めて、ちょっぴり懐かしさに涙腺が緩んだ。

「私、ちっちゃい頃からジャニーズの世界しか知らなくて…。幸せ者ですよね。でも、それが目の前から消えた時に、“普通”が分からなくなったんですよね」

私の普通は、学校が終わればお仕事の現場に行って、夏休みはダンスの練習に明け暮れて、ステージに立って…そんな生活。

家で待っててくれる家族は、大スター滝沢秀明。

お仕事で滝沢くんの帰りが遅くなることも、少なくはなかった。

中学生になって兄弟と暮らし始めても、兄は現役のプロ野球選手。

私自身、中学生になったことで少しずつお仕事も増えて、相変わらずの日々だったし、お世辞にも、普通の生活ではなかったと思う。

「唯一知ってる“普通”は、お兄ちゃんたちと同じ“高校野球”の道だけだったんです。んー…大好きな兄たちへの、憧れもあったのかな」

素直になれる、この場所で、埋める空白の3年間。