無限の未来 17th season (ページ32)

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832話ページ32

【高地】

「あらら、ちょっと頑張りすぎたねぇ」

涼「Aねぇ、ゴメン…。でも俺…やりたい」

「んー…どう思う？高地ぃ」

黄「えっ、俺ぇ？」

Aの着替え用に振り分けられた楽屋で、グッタリ横になっているのは、Aではなくて、今回“課題”のために裏方として舞台に参加している橋本っちゃん。

彼は、今回の事態を相当反省しているらしく、表に出ない仕事だろうと、骨の折れるような雑用だろうと、黙々と取り組んだ。

けど、きっと俺たちよりもハードな日常を過ごしていたのだろう。

慣れないことに体が驚いたのか、今この状態。

「とりあえず、滝沢くんに相談してみる。涼はいい子にしてて。ね？」

そう言って、パタパタとAが楽屋から出て行ったのを見送ると、橋本っちゃんは、“情けねぇ…”と言って唇を噛んだ。

黄「A、しばらく帰ってこないと思うから。泣くんだったら今のうちだよ」

橋本「えっ…」

黄「俺、口硬いから」

ほぼ同時期に入所をした橋本っちゃん。

あの頃ダントツで幼かった彼と、そこそこ大人の領域に足を踏み入れ始めていた俺。

彼にとっては、きっと遊びの延長のような感覚からスタートしたこの仕事。

でもそんな仕事を続けているが故に、普通の生活は、無意識のうちに制限される。

そのギャップは、いつか綺麗に回っている歯車を壊してしまう危うさがあるんだって、昔Aが言っていたっけ。

橋本「Aねぇを、裏切った…」

黄「…相手のこと、好きだった？真剣に」

橋本「…答えたく、ないです」

黄「…Aには、答えてあげてね」

それだけ言えば、小さく頷く橋本っちゃん。

熱のせいか、涙のせいか、潤んだ目がこちらを見つめていて、何か言いたげだったけど、言葉が出てこないのか、その目は逸らされた。

「涼。今日は、お休みしよ？」

橋本「でもっ…」

「しんどかったら、ここにいてもいいけど。せっかくやし、見て行きな。…とってもいい舞台だから」

少しダルそうに壁にもたれる彼の横にしゃがんで、目線を合わせたAは、誇らしげに笑っていた。

寝てたら後悔するよ？って、得意げに話すAが、いつもより大きく見えた。