無限の未来 17th season (ページ30)

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830話ページ30

【ジェシー】

赤「おかえり」

「え、なんで全員おるん」

休演日なのに、どこへも行かず、シェアハウスでくつろいでいる俺を見て、笑いながら“なんでよ～”って連呼しているA。

だって今日は、Aの検診日だったから。

それも、治療を終えて1年が経った検診日だから、ちょっと特別なんだ。

黄「んで、どうだった？」

「うん。大丈夫やった。再発もなかったし、あぁ…義足だけ、また調整しないとあかんって。一応、舞台終わってからってことで話してきた」

赤「ハハッ！よかったねぇ、A！今日は、お祝いだぁ～」

「ちょ、まぁだ1年やで？たったの1年。でも…ありがと」

ちょっと恥ずかしそうに赤い顔をして、俺たちから目を逸らしてそう話すA。

たったの一年。

それでも、特別な一年。

そんなことは、誰よりもAが一番分かっていて、これまで何度も何度もその時間に裏切られてきた。

だから、されど一年。

赤「ケーキ買いに行こ？」

「食べたいだけやん」

緑「いいやん、食べようよ～」

「…ほな、パイナップルのタルト。あれ食べたい」

お祝いだから！って言い張る俺たちに、少し呆れてるけど、Aは嬉しそうで。

それ以上に、治療を終えてから一年間、“再発”の言葉を乗り越えることができたのは、今回が初めて。

いつも、あと少しのところで再発に苦しんでいた。

「まだな…5年経つまでは、どうしても安心できひんねん。でも…なんか、今までの最大の難所は、越えれたんかなって感じ」

赤「うん」

「デビュー決まってからな…ずっと不安やった。また再発したら、水を差すって。やから、ずっとデビューしたかったけど、いざデビューってなったら、押しつぶされそうになった」

赤「そんなこと…」

「だって、嫌やん。7人で、デビューしますって言うたのに、蓋開けてみたら、私だけがおらんようになったら…」

“バカレアの二の舞やん？”

そう言って、苦しそうに笑ったAが、また言葉を続けた。

「でも…その気持ちに目を瞑ってよかった。もし万が一、また再発したとしても、私には6人がついてる」

大丈夫。

4年後だって、きっと俺たちは、7人で笑ってる。