無限の未来 17th season (ページ3)

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803話ページ3

【北斗】

グループのお知らせの中で、最高潮かと思われた、全国ツアー開催のムービー。

しゃがんで見ていたからか、俺のすぐ隣にいたAがフラついて、少しだけ苦しそうな顔をした。

「ごめ、ほくっ…」

黒「ん、大丈夫。…よかったね、喜んでもらえてる」

「うん…ｯﾊｧ」

黒「焦んない、焦んない。ゆっくりな…」

やっぱり、どんなに腹を括っても、どうなるかわからないこの後の発表を控えて、息が上がっているAを見て、咄嗟に樹がジェシーに声をかける。

このあとのMCを代わってもらうつもりなんだろう。

青「北斗…さんきゅ。どう？」

黒「ちょっと、厳しいかも。でも…居たいよな」

「居らな…あかん…ｯﾊｧ、居りたい」

青「ん、わかった。とりあえず、落ち着こ」

樹と2人、何とかAを落ち着かせて、“その時”を待つ。

ジェシーの声がして…ファンのみんなのざわめきが聞こえて…そして…。

“SixTONES、SnowMan、2020年、同時CDデビュー決定！！”

歓声のような、悲鳴のような…そんな声が、会場いっぱいに響き渡って、俺でさえ頭が混乱しそうだった。

でも、よく見れば…そこにはもちろん、喜んでいる人だけではなくて…しばらくなにもできなかった。

あの崩れ落ちているお客さんは…喜びで泣いているのか、それとも…絶望か。

ゆっくりとそれを見渡して…頭を下げて、小さく喜びのガッツポーズをした。

隣では…Aが、ずっと頭を下げていた。

青「A…」

Aは一向に顔を上げなくて…苦しそうに呼吸をしていたけど、今は、そんなAを支え、背中をさすってやることしかできない。

Aも樹も、ただの一度もガッツポーズはしなかった。

Aはただひたすら、深く、深く頭を下げていて…樹は、俺と一緒に彼女の小さな背中をさすりながら、ゆっくり、ゆっくりと…会場を見渡していた。

黒「A…？すぐ歌入るけど、歌える？」

しゃがみ込んで、Aの顔を覗き込むけど、ギュッと硬く目を瞑って、必死に息を整えようとしている姿が、なんとも痛々しい。

けど、歌わないわけにもいかない…それは、本人もわかってるはずだから、背中を押すしかない。