無限の未来 17th season (ページ20)

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820話ページ20

拝啓私の恩師様

そちらの世界には、もう慣れましたか？

私は…あなたのいないこの世界に、まだ、自信を持って“慣れた”なんて言えません。

もう、2ヶ月も経ったのに。

でも、少しずつ…慣れていかなきゃいけないね。

東京ドームの発表のとき。

私たちからしか見えないところに、ジャニーさんの姿が目に入って、その場で崩れ落ちた私。

2ヶ月も経てば大丈夫だと思ったのに、やっぱり今日もダメで、どうしても苦しくなって、みんなから少し離れた場所で、みんなを見つめる。

聖「隣、居てもいい？…うちの弟が、お前ひとりにしとくの不安って言うから」

「ふふっ。こーくん、こういう時は、ちゃんとピアス外しなよ…」

聖「バーカ。これがついてないと…ジャニーさん、わかんねぇだろ、俺のこと」

聖くんはそう言って、私の隣で優しく笑った。

まだ、みんなのように上手に笑うことはできなくて…こんなんじゃ心配かけちゃう…って、自嘲気味に、下手くそな笑顔を貼り付けてみた。

そんな私に、“みんなが笑ってるからって、Aも笑わなきゃいけないわけじゃないじゃん”と言ってくれる聖くん。

マッチさんの言葉を、みんながジャニーさんを思う言葉を聞きながら、楽しそうに、恩師を思い返す姿を見ながら…涙が溢れた。

それと同時に、もういないあなたを思うと…どうしようもなく苦しくて、頭が真っ白になった。

聖「A、苦しいか？」

「(ｺｸｺｸ)…ﾂ」

聖「ん、焦んなくていいからな…」

「こぉ、くん…ｯ、ﾊｧｯ、ﾊｧ…ﾝｯ､くる、し…」

聖「うん、いいよ。こっちおいで」

背中を行き来する大きな手は、大好きな手よりも、少し厚くて、優しい手。

いつの間にか、その手は別の手に代わっていて、香るのは大好きな人とは少しだけ違う、バニラの香り。

これは…滝沢くんの匂い。

それに混じる香りは、樹くんか、それとも和にぃか。

滝沢「ゆーっくり…ゆーっくり…。焦らなくていいからな。ほら、聖も…ずっといてくれるだろ？」

青「いっぱい泣いていいよ。Aが笑えないなら、俺たちが…Aの分まで笑うから」

少し掠れた、甘ったるいその声が、また私を安心させるんだ。