無限の未来 16th season (ページ45)

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795話ページ45

【北斗】

ステージを終えて、楽屋に戻ると途端にしゃがみ込んだAは、多分ステージで全ての力を使い果たしていて。

それでも、樹に“よく頑張った、最高だった”って、思いっきり頭を撫でてもらってご満悦な様子。

黒「足出して？」

「…んっ」

黒「んー。まぁ、そうよね…。8.8のこともあるし、このまま樹と病院行っておいで？」

「そうします…」

思いの外すんなりと足を見せてくれたAだったけど、これは予想以上に傷口が開いていて、よくもまぁこの状態で本番乗り切ったもんだ。

本番もちゃんと乗り切れたことだし、俺らは事前に聞いていた犯人のことを伝えれば、ほっと胸を撫で下ろして“自分で一発ぶん殴りたかった”なんてケラケラ笑う、物騒なうちのお嬢さん。

「でも、そんなことしたら…ジャニーさん怒るか」

黒「怒られんのは、俺ら」

「Aはレディなんだから、YOUたち巻き込まないでよ！」

絶妙に似てないモノマネで、大好きな人を思い返す彼女はそれまでと同じように笑っていた。

前を向けたのか、なんて野暮な質問はできなかったけど、きっと、冗談めかした様に、笑ってジャニーさんのことを話せたのは…とってもいい兆しだ。

念のため、今日はもう歩くのはやめさせて、局の車椅子を借りれば、ちゃっちゃとシャワーを浴びた樹が滝沢くんと玄関で待っていた。

と、そこに滝沢くんが逃さないように自身のすぐ横に留めている1人の女性。

「…あれが、犯人？」

黒「まぁ、およそ…そうでしょうね。俺は見てないから分かんねぇけど」

「ふ～ん」

黒「…いや、殴んなよ？わかってるよな？」

思わず車椅子を押す手を止めれば、Aがこちらを向いて、“やんないわ”って言いながらも、いたずらっ子の顔でニヤリと笑うもんだから、油断も隙もならないとはコイツのためにあるような言葉だ。

前を向いてるのはいいことだけど…当分、というか、一生こいつから目を離すことはできなさそうだ。

「うちの事務所の人間の“執念”は、そこらの防犯カメラより、よっぽど性能いいですから。…舐めない方がいいですよ？」

犯人の女性にそう言い残して、Aはもう一度ニヤリと笑った。