無限の未来 16th season (ページ39)

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789話ページ39

【北斗】

どんなに足掻いても、止まることのない時間の中で、運命の日…なんていったら大袈裟かもしれないけど、それほどまでに俺らにとって大切な日が刻々と近づいていた。

流される時のスピードに、うまくついて行っているようには見えるけど、実際、取り残されないように必死ではある。

「ほっくん？考え事？」

黒「あなたのことで、ちょっとね」

「え？私？」

一時的に使った薬は、思いの外Aの体によく合って、副作用やいらない反応も起きることなく、無事に少しの無理ができるようになったのは、ジャニーさんが手助けをしてくれたんだろうか。

そのジャニーさんの件に関しては、まだ完璧に前を向けたわけではなくて、ときどきAの心に暗い影を落とすけれど、それはそれで。

“別に忘れなくたっていいし、前向かなくてもいい。苦しいなら立ち止まって、想ってあげたらいいよ”

って、これは樹が届けた、ちょっとクサいA宛の言葉。

黒「お前、樹のこと好き？」

「なに、急に。どういう意味よ」

クスクスって笑うAは、ここ最近で、急に大人になったような気がする。

ふと彼女の抱える資料に目を向ければ、そこには、かつて俺たち全員がバックで出ていたコンサートのDVDやら打ち合わせ資料やら。

黒「あんまり無理して詰めるなよ？」

「樹くんに怒られたら、ほっくん味方してくれる？」

黒「やぁだよ、アイツ怖えもん」

「けちんぼ」

黒「うおっ。俺、そんな言葉は久々に聞いたよ？」

こうやって、当たり前のように軽口叩いて、クスクスと笑って、何が楽しいんだかわからないけど、しょうもない小ボケを挟んだりさ。

なんてことない日々の中にも、どこか張り詰めた空気があるのは、迫り来るその日への緊張。

なにをどれだけ詰め込んだって、どうしても不安になってしまうのは、Aの性格上致し方のないことなのは、俺たちもよく分かっている。

そこへきて、ようやく体調だって、なんとか安定してきたところだ。

黒「無理すんなとは言わないよ。ただ、明後日…絶対出るんだろ？」

仕事に穴を開けるなよ？という遠回しな忠告が、案外コイツには、一番効くのかもしれない。