無限の未来 16th season (ページ38)

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788話ページ38

【慎太郎】

“A、事務所にいるから迎えに行ってやれない？”

なんて、Aの迎えだったら何よりも優先しそうな樹からのメッセージに、ちょっと嫌な予感を覚えて事務所へ車を走らせた。

見るかわかんないけど、一応、どの部屋にいる？とだけ送れば、明らかにAからの返信ではないけど“6階の会議室”と飛んでくる。

緑「A～…って、ふっか」

深澤「一緒に構成詰めてたんだ。急に、崩れ落ちるみたいになってさ…話は樹から聞いてたから」

緑「ごめん。ビックリしたっしょ」

深澤「そりゃぁね」

ふっかに体を預けて、大きく何度も深呼吸を繰り返すAの体には、力が全然入っていなくて、ダランとだらしなく腕が落ちていた。

ちゃんと意識があるのかだけ確認したくて、あまり刺激しないように、いつもより少し小さい声で名前を呼べば、うっすら目を開けるA。

「慎…ごめん…」

緑「うん。ふっか、ビックリしてるよ」

「へへっ…ふっかも、ごめんね。ちょっと…動けないや」

悔しそうに、唇を噛んで、ギュッと力を入れたら壊れてしまいそうな程ほっそい腕で目元を隠すAは、相当参っていた。

どうしたものか…。

ただ、もう今日は夜も遅いし、事務所だってもうすぐ戸締めの時間がやってくる。

「ごめん、慎…歩けそうに、ない…」

緑「バカなの？立ち上がることすらできないのに、無理に決まってる。…ちゃんと掴まっててよ」

「ごめ…」

緑「ふふっ。怒ってないから、謝んないの」

実際、ズンっと預けられるAの体重と、全然比例してくれない血の気の引いた、温かみのない体には焦りしかない。

あぁ、とりあえず俺以上に焦ってたであろう、こいつの彼氏に連絡してやらなきゃって、どこか頭は冷静だった。

病院へ連れて行けば、やっぱり言われるのはストレスによる神経の乱れが…って、難しいことを言われる。

「樹くん、怒ってた？」

緑「なんで樹が怒るのよ」

「なんとなく。…ねぇ、慎？」

緑「んー？」

“絶対に成功させようね”って背中から聞こえる声に、俺は別に何を答えるわけではないけど、彼女が落ちないように、もう一度彼女をおぶった腕に力を込めた。