無限の未来 15th season (ページ5)

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705話ページ5

【大我】

桃「A、俺も手伝うよ」

「ありがとぉ、大我くん」

桃「体、疲れてるんじゃない？」

リハが終わってからも、ひとり稽古場に残ってアレンジを続けるA。

他のメンバーが、仕事や予定の関係で帰っていく中、俺は今日稽古も休みだし、残ることにしたのは、あの冬の記憶があるから。

飲み物だけ買って稽古場に戻れば、いくつかクシャクシャっと丸まった楽譜が机に転がっていて、うまく進んでいないことを察する。

第一、舞台稽古期間中の俺が編曲を手伝うと言って、素直に甘えてくるあたり、切羽詰まってる。

桃「どんな感じにしたいの？」

「頭は決まってる。音はなし。ホンマもんのアカペラから始めよかなって…。他も、音少なめでやりたいけど…」

桃「そっかぁ。じゃぁ…最初Aがアカペラしてる間に、俺出ようか？後ろで、ギター弾く」

「それは、嬉しいけど…大我くんに負担かけるからやめておく」

うん、確かにそれは一理あるんだよな。

せっかくAのバックで弾かせてもらえるのであれば、妥協はしたくないし、舞台のことも考えれば、ちょっと難しいところはある。

しかも、Aの思い入れの強い“オモイダマ”だ。

余計、蔑ろにはできない。

「でも、やっぱりギターよなぁ…私もそのイメージはあんねん。アレンジ入れてても、ピアノではないかなぁって…」

桃「よし。樹だな！樹とやんなよ！甲子園出場経験ありのAと、弟が甲子園のマウンドに立った樹の“オモイダマ”だよ？必然的に、気持ちはこもるし、2人ならできる！」

俺は決めたら早いんだぜ？って言いながら樹にメールを打てば、まだ近くで飯食ってるから戻るっていう返信。

それを見せると、Aはちょっとだけブスっとしてたけど、“確かにイメージはできる”って嬉しそう。

青「固まったみたいね」

「うん。よろしくお願いします」

青「任せなさい。ちょうど、Aの同級生はこの春から社会人かぁ…。節目の年に、最後の夏のテーマソング歌うの、なんかいいな」

Aが頭捻って選んだ曲から、俺は気づきもしなかったそんな細かいAの想いまで汲み取っている樹なら、きっと大丈夫だって思った。