無限の未来 15th season (ページ16)

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716話ページ16

【樹】

青「A～、メイク終わったら教えて？」

「…？」

青「メイク、終わったら、教えて？髪の毛、やってあげる」

補聴器をする時のヘアアレンジは、俺がやってるのがいつものパターンだから、そう声をかける。

別にそんなに器用に、北斗みたいな上手なアレンジができるわけではないけど。

ハーフアップにして、耳が隠れるように。

兄貴が前にAにやってて、Aが“耳隠れる！”って喜んでたから、教えてもらったんだ。

「樹くん、メイク終わったぁ」

青「んー。耳、一回つけ直そっか…オッケー？」

「おっけぇ」

鏡の前にズラーっと並んで、こんな風に7人で髪の毛をいじるのなんて久しぶり。

補聴器をつけ直したAの髪を整えて、スッと手にとれば、うらやましいほどにスルスルとこぼれ落ちそうな髪。

青「伸びたねぇ、髪の毛」

「半年、伸ばしてるからね」

青「…昨日、ごめん」

「…Aも、ごめん」

昨日の夜、ホテルで2人しっかりと話したけど、そういえば、怒鳴ったりしたことを、まだ謝れていなかったなって。

Aはすぐに謝ってきたけど、俺だってAの立場だったら、きっと耳のことは黙っていたと思う。

自分の体に起きている異変に対する恐怖だけじゃなくて、話した相手がどんな思いをするか、簡単に想像がつくから。

青「夢見るの、まだ…怖い？」

「えー？んー。まぁ、そりゃね。コントロールできないから…いつ見るかわからんし」

青「Aが嫌じゃなかったら、家にいるときぐらい一緒に寝ていいんだよ？」

そう言うと、少し考える仕草を見せて、“大丈夫”と言って笑ったA。

「メンバー離れ。樹くん離れを、どこかでしなきゃいけない。じゃないと、依存しちゃう」

青「それでも…」

「いいのかもしれないけど、みんなのことを、信じてるから…だから、依存はしたくない」

青「お前…ちゃんと考えてんのな」

かわいいとばかり思っていた、愛おしいとばかり思っていたメンバー。

守りたい、守り抜かなくてはと思い続けた彼女は、俺が思っていたよりずっと強かった。

でも、時々頼るかもって、真っ赤な顔で俯きながら言うAを、そばで支えたい。