無限の未来 15th season (ページ38)

今日:12 hit、昨日:27 hit、合計:74,143 hit

738話ページ38

【高地】

黄「Aー？そろそろ行くよ～」

「はぁい」

あれから、Aは頻繁に病院へ通うことは無くなったものの、今でも定期検診には通っている。

曜日的にもタイミング的にも、どうしても毎回少クラの収録日とかぶってしまうんだけど、俺は、病院への送り迎えのドライブが好きだったりする。

まぁ、当の本人は検査とか疲れちゃうのか、帰りは途中で寝ちゃうんだけどね。

黄「あ、そうだ。密着の話」

「んっ…？ごめ…なにぃ…？」

黄「あぁー、いいよ。あとでも大丈夫。てか、顔色悪いけど…体調悪い？」

「補聴器かなぁ、なんか最近、ちょっと頭痛いんだよね…」

“頭が痛い”その言葉に、どうしてもまだ、ドキッとしてしまう。

以前、転移腫瘍の再発が判ったのも、確か治療を終えてから半年ほど経った時だったように思うから、余計に。

「高地…？」

黄「ん？え、あぁ。ごめん、なんでもない。着いたら起こすし、寝ててもいいよ。ブランケットいる？」

「そーする…」

結局、今回も異常はなくて、頭痛はAが思っていた通りの補聴器と耳の相性によるものだった。

追加で耳鼻科を回って、調整をしてもらったところで収録へと向かう。

とにかく、再発がなかったことに安堵する俺たち。

「高地、ごめんね…不安にさせて」

黄「ん？いいのよ。だって、Aは俺より不安な中で、それでも前向いてるんだから」

「こーち…ちょっと、甘えてもいいかな…」

黄「どしたよ」

「わかんない…わかんないけど、不安なんだ…」

Aの声が、徐々に曇っていくのが分かった。

宮城公演を数日後に控えて、ここ最近はそんなに大きく落ち込んだり、うまくいかないこともなかった。

むしろ、事態はいい方向へ向かっているとさえ思う。

だからなのか、久しぶりに受けている彼女のダメージが分からない。

「本当に…分からないんよ。何が不安なのか、何が怖くて、何が…っ」

黄「落ち着け、落ち着け…A。大丈夫。不安になっても、絶対に俺たちがいる。分からなかったら、分からないなりに、一緒に考える」

車を止めて、彼女の方を向き直せば、不安で揺れる瞳が、俺の方を頼りなく見つめていた。