無限の未来 15th season (ページ14)

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714話ページ14

【北斗】

黒［リハ、やってみてどう？］

［慣れてる曲は、頑張れる］

答えになってるんだか、なってないんだか…。

楽屋の畳でコロンコロンと寝転がるAは、まだちょっと樹を警戒中。

補聴器は、リハを終えてすぐに外しているから、今のAは、ひとりで音のない世界にいる。

「ホテル、部屋、同じでもいい…？」

黒［俺と同じ部屋ってことは、樹と同じ部屋だよ？］

「だからやもん…」

黒［A…。言いたくなかったら、言わなくていいけど…どのくらい、夢見てたの…？］

躊躇いがちに動かす俺の手を、ぽやっと見つめて、ふと目を逸らすA。

もちろん、この手話が理解できてないわけではないから、きっと“答えたくない”っていう、Aなりの意思表示。

プイッと俺に背を向けて、またゴロゴロ。

黒［(ﾄﾝﾄﾝ)ごめん。もう聞かないから］

「ほっくん…」

黒「ど、う、し、た？」

「苦しい……。いつになったら…忘れられる……？」

そんなことを、俺に聞いたって答えが返ってこないことは、Aだって解ってるだろうけど…。

それでも、そんな俺にでも縋りたいくらい…Aはあの記憶に追い詰められていたんだ…。

本当に、どこにもAからのSOSはなかったんだろうか、そう問われたら、自信がない。

自信のないまま、ただそっと、俯くAの頭に手を置いて、大丈夫だよって、届くか分からない声をかけてあげるだけ。

黒「俺も…苦しい」

しばらく、そうしていたような気がする。

そろそろホテル行くよ、って呼びにきた高地は、俺たちの様子を色々察したみたいだった。

そっと近づいてきて、Aの顔が見えるようにしゃがんで、ニカッと笑顔を見せる高地。

黄「A？一緒に、ホテル、帰ろう？」

高地の言葉に、ゆっくり頷いたAの手を引いて、うーちゃんとメンバーの待つ車へ向かう。

ホテルに着くまで、特に何を話すわけではなかったけど、車に揺られてウトウトするAは、まだどこかちょっと怯えている。

黒「大丈夫だよ。俺たちが守ってあげるからね…。寝てもいいんだよ…」

ジェシーも、慎太郎も、高地も樹も、ここに居るみんなが、守るから。