無限の未来 14th season (ページ7)

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657話ページ7

【樹】

青「おいで？」

「…ありがと。ふふっ、いい匂い。あんね、この前ほどは、緊張してないよ」

青「そ？ならよかった」

本番前、彼女を抱きしめるのは、毎回のステージのルーティンだ。

元は、ステージ前の緊張で、どうしても呼吸が浅くなってしまうAを落ち着かせるためだったけど、今はこうすることで、普段通りできそうか、確かめている自分がいる。

「今日も、樹くんの匂い」

青「最後まで、がんばれそう？」

「なるべく、泣かないように…がんばる」

青「ふはっ。それでいいわ！A？いつも通り。最後まで、生き抜け。な？」

多分、この前に…何かはあったんだと思う。

関西のメンバーと話していた時から、顔が歪んだり、笑ったりを繰り返していた。

でも、俺のところへ来る頃には、もうスッキリした顔を見せていたんだから、これ以上俺からなにかすることはない気がする。

青「よっしゃ。行こっか」

「うん！」

ステージに立った今日のAは、強気だった。

少しだけ跳ね上げた目尻のライナーが、それをより一層際立たせている。

それが俺のラップを後押ししてくれて、俺たち6人のボルテージもうまく上げてくれる。

赤「っしゃ！あそぼーぜぇーーーー！」

「ついてこーーーーいっ！」

とても今日の朝、高熱を出していたとは思えない、力強くて、自信に満ちたパフォーマンス。

一瞬で終わってしまった、最高の時間だったけど、噛み締めるように終えた。

全てを出し尽くしたのか、最後の最後、グラっと体の傾くAが視界に入ったけど…

青「目眩？」

「いや、久々やから…」

そう言って、いつもより高めのヒールを指さすAに安心しつつ、念のため義足を外せば、特に怪我もなく胸を撫で下ろした。

ほんの少しだけ、右の足首を捻ったという自己申告はあったけど、これも特に大きな怪我はなかった。

「ごめんね、大丈夫って言うたのに…」

青「ん、大丈夫だって。ケガなくて良かったよ」

「怒って… 青「ないです」

念のため捻った足にテーピングを巻いて、2曲分のバックをつとめれば、大丈夫そうだと笑うA。

次は、いよいよタキツバさんのラストステージだ。