無限の未来 14th season (ページ46)

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696話ページ46

【樹】

「ﾝﾊｯ…ｹﾎｹﾎｯ…ﾊｧｯ…ﾊｧｯ…」

青「ゆーっくり息しような」

ヒューヒュー、ゼェゼェ音を立てるAの背中で、呼吸のスピードを落とすように、ゆっくりすぎるぐらいのリズムを刻む俺の手。

余程苦しいのか、助手席の背中に前屈みで体を預けているAの姿に、胸が苦しくなる。

黒「ﾊｧｯ…A、だいじょーぶ？」

黄「お前は自分の心配しろ。寒くない？」

黒「だいじょぶ…」

助手席の北斗も声に力がなくて、相当辛いのが伝わってくる。

と、急にAの体から力が抜けて、俺の方へグタッと倒れ込んできた。

受け止めたAの熱い体には、ほとんど力が入ってなくて、熱を帯びた苦しそうな息が漏れるばかり。

青「A？大丈夫？」

普段なら、声をかければ、どんなにしんどくても何かしらの反応はあるのに、頷きも、手を握り返しもしないAに感じる異変。

青「…ん？(ﾄﾝﾄﾝﾄﾝ)A？…Aっ！わかる？やっべぇ…っ！唇、色変わりはじめてる…！高地、急いでっ！」

黄「焦んな、樹。そのまま呼びかけてて。A、あと10分くらいで着くからね〜。もうちょっと頑張ろうなぁ…」

病院に着けば、準備万端で待ち構える先生と、久しぶりに会う、兄やんこと坂本家の長男。

すぐに酸素吸入と、強めの点滴をしてもらっても、苦しそうな呼吸はなかなか戻らず、高熱のせいか、低い酸素のせいか…Aの意識は朦朧としていた。

俺の手をかろうじて握ってはいるものの、目は虚ろで焦点も合わず、早く浅い呼吸が繰り返される。

次々に追加される点滴が、痛々しい。

青「A…がんばれ…」

長男「お前がそんな不安そうで、どーすんねん」

青「兄やん…」

長男「うちの妹は、強い。な？A。お前の彼氏は心配性やな～」

青「ちょっ…！」

長男「……頼むな、樹。でも…もし、無理ってなったら」

青「ならない。…ならないよ、兄やん。一生守るって決めてるから。ガキん時から」

“意外と頼もしいやん”って俺の頭に置かれた手は、昔と変わらずデカかった。

早く、この手に追いつきたい。

そんな想いを込め、Aの左手を包む両手に、グッと力を込めた。