無限の未来 14th season (ページ14)

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664話ページ14

【大我】

「一歩ずつでいいさ…この手を、離さずに…」

青「A、まだ練習してんの？」

桃「うん。でもなんかちょっと声出しづらそうかも」

最近、Aは歌にこだわっている。

元々SixTONESの武器にしていたAの歌声は、俺たちも伸ばしたい。

でも、ちょっと練習しすぎてる感は否めなくて、気にかけていた。

「ん゛っ！」

青「Aー。練習しすぎて、喉痛めたら意味ないんだからね？」

「うん、分かってる～」

桃「A、さっき聴いてたんだけど…高音ちょっと出にくい？」

過保護な樹は一旦放っておいて、さっきの声で感じた違和感。

高音に上がる前、やたら準備をしてから声を出しているように思ったのは、気のせいではなかったらしい。

「耳のせいかな？声はそんなに違和感ないんだけど、出にくいっていうより…うまく聴こえなくて、思うように当たらない」

桃「うわぁ…そういうことか。あとで一緒に合わせてみよっか」

「助かる、ありがとう」

桃「本番まで補聴器、外しておきな？耳、痛いんでしょ？」

「バレたかぁ～」

大我くん鋭いから嫌～って、ケラケラ笑いながら補聴器を外しているAを見て、嫌でも蘇るのはあのサマパラ。

多分、樹も同じことを考えていたのか、伏目がちにこっちを向いて、悔しそうに唇を噛んだ。

Aの耳のことは、誰にもどうしようもなかった。

もちろん、左足も、脳の傷だって、誰のせいでもなければ、誰が何をできたことではない。

けど…近くにいたのに、っていう、そのどこにもぶつけられない悔しい気持ちは分かる。

桃「樹？」

青「俺が悪いわけじゃないのは、分かってるから。だから…言わないでよ」

桃「時々、ちっちゃい頃のAが恋しくなる。慎太郎とは、また違う感情」

桃「こうなることを知らないで…ただ、誰にも負けたくなくて、ダンスが大好きで…芝居が大好きで…ジャニーズJr.として、ここにいることが楽しくて仕方ないだけだったAに…会いたくなる」

俺がこんなことを言うなんて、あんまりないから、樹は驚いた顔をしていた。

でもすぐに、樹のあったかい手が、2回だけ俺の背中で跳ねた。

それで、十分だった。