無限の未来 13th season (ページ7)

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607話ページ7

【北斗】

本来なら、Aの治療が無事に終わったことを心から喜んでやりたいのに、俺たちのそんな気持ちを無視するかのように飛び込んできた報告。

“明日には、マスコミからも発表がされるから”

淡々としたマネージャーのその言葉に、呆然とした。

それを聞いても取り乱さないAを見て、全てが繋がった気がした。

黒「知ってたんでしょ？」

「ごめん…」

黒「…俺がAでも、さすがに一人で抱えたと思うよ。Aは、先輩を守ったんだ。立派」

樹から聞いた、昨日のできごと。

メンバー全員が、一瞬驚いた顔をして、どこかやるせない、切ないような表情になった。

たまたま耳にしてしまったことで、そこまで追い詰められていたAに、気づいてやることのできなかった悔しさ。

「でも、大丈夫…樹くんが、ちゃんと…繋ぎ止めてくれたから。辞めたりしない」

黒「それでもまだ、辞めないって…だけでしょ？本当はまだ、前向けてないんでしょ？」

「それは…」

黒「大丈夫。辞めないんだったら、前向けなくても俺らが…連れていく」

黒「いつになるかわかんないけど…前向けるようになったら、また俺たちのことリードしてくれたらいい。それまでは、甘えて」

そんな風に言えば、“前に大我くんにも似たようなこと言われたかも”って言われて、少し恥ずかしくなった。

それと、目に入ったのはAの腕に仲間入りをしたブレスレットと、また左耳に増えたピアス。

黒「それ、樹の？」

「うん。サイズ、ちょっと変えてくれた」

黒「それに…また傷つけて。樹と同じ場所だろ。…バレないようにね」

「…ええの？」

黒「いいわけじゃないけど、こればっかりはね」

もちろん好ましいことではないけど、人の気持ちなんて、止めたってどうにかできることではない。

それに、2人だってこの世界に長くいるんだから、わきまえて動くって信じてる。

「ほっくん…今日だけは、自分のために舞台に立ってもええかな」

黒「当たり前でしょ」

辞める覚悟で舞台に立っていたことさえ気づかなかったけど、またもう一度立ち上がってくれたAが、少しでも早く前を向けたらって、今はそう願うしかない。