無限の未来 13th season (ページ31)

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631話ページ31

【ジェシー】

「ジェス、待って…」

赤「っとと、ゆっくりおいで？」

青「ふらつく？」

補聴器なしで動くときは、時々うまくバランスが取れなかったりするA。

少し顔を歪めているし、今日は疲れもあって、ちょっとしんどいのかな。

人もいないし車椅子でも良かったんだけど…それは嫌みたいで、今日は歩くと言って聞かないA。

まぁ、その姿が映って、補聴器を盗んだ犯人に負けたような気がするのが嫌なんだろうけど。

赤「んーじゃ、俺と慎太郎でサンドイッチして歩けばいいっしょ？ほら、手繋ぐよ」

青「頼むわ…。ね、今日はそれで勘弁して？」

「うん…そんなら、いい…」

緑「へいっ、行くぞ、A！」

駅に入っても、別にこれといって普段の駅と変わらないじゃん…とか思ってたんだけど、樹の一言で、そんな気持ちは吹っ飛んだ。

青「あれじゃない！？」

樹の指差す先には、でっかい看板があって、一面に俺たちの姿。

なんか…自分たちでも、自分たちじゃないみたいだった。

「わぁ～！おっきぃー！」

黄「俺がいる！」

黒「えー！まじ？でっか！」

他のメンバーも、興奮が抑えきれなくて、見れば見るほど嬉しくて、どんどんテンションが上がっていく。

Aも、フラフラしてるくせに、嬉しそうにはしゃいでいて、危うく転びそうになる。

青「A、A、おいで！お前、めっちゃキレイだべ？」

「わぁ～っ！Aやないみたいっ！」

黒「本当に。なんか、不思議な感じ」

青「俺らがさ、見にきたよって、名前とか残そうよ」

樹の提案というか、最初からそういう予定ではあったけど、一人ひとり、自分の看板に名前を刻んでいく。

その瞬間、ゾワゾワって、言葉にできないような感情が押し寄せてきて、思わず、側にいたAの手を握った。

「…ふふっ。どうしたん？」

赤「いや。なんか…幸せじゃね？」

「へへーっ？なんやそれ」

赤「…A、…Aも、幸せ？」

「…」

すぐに答えてはくれなかったけど、確信犯で顔を覗き込めば、“辞めなくてよかった”って、一粒だけ涙を落としたA。

たった一粒、一筋流れた涙が、一瞬だけ輝いたような気がした。