508話 ページ8
【樹】
変に緊張してしまうのは、プラスもマイナスも、いろんな言葉が向かってくるのがわかってるから。
でも、嬉しい。素直に嬉しい。
「Aもヤンキーになろっかなぁ〜」
青「十分です」
「うぇっ！？」
黒「お前気づいてないだろうけど、結構最近じゃ、治安悪いって有名だからね？」
そんな風に俺らがいじってるAは、また少し髪が抜けてきて、一度はロングにした髪も、少年たちを終えて、またショートヘアになった。
前と同じだとバレちゃうかな…って、新調したウィッグは、金髪のショートボブ。
正直めちゃくちゃ似合ってるし、当のA本人なんて、ウィッグだと何が似合うか色々試せていいよね、なんて本心かはわからないけど楽しんでる。
「っしゃぁ！爪痕残す。もーめっちゃ引っ掻いてくるから」
青「気張りすぎんなよ〜」
「って言ってる樹くんも、震えてるよ？」
青「うっせ。お前だって…息上がってんだろ」
強がってたって、ハッタリだって、やるしかない。
71公演走り抜けて、正直、感触だって悪くなかった。
それでもまだ道は開けなくて、ただもがくしかなく、目の前の何かに、ただひたすら噛みついて、掴んでいくしかない。
何がチャンスで、何がチャンスじゃないかなんて分からないから、わからないからこそ、とにかく食らいついて、爪痕を残さなきゃいけない。
「失うものなんて、ない」
青「掴み取るものしか、ない」
「んっ」
青「生き抜け」
いつからだろう、ステージに立つ前のAに“生き抜け”と言うようになったのは。
そう声をかけるようになったのは、目の前に必死になるあまり…ここ最近のAに、儚さを感じてしまっているから。
全力で、全身全霊で臨むAの、儚さと脆さ。
青「いこう」
5分やそこらだったと思う。
でも、そんなことは関係ない。
中丸「樹！…ありがとな」
先輩からの、中丸くんからのその一言が、何度も俺の心にこだましていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 167人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かん。
| 作成日時：2020年12月15日 20時
