539話 ページ39
【ジェシー】
2日目の公演は、オーディションの関係で少し他の公演とは違っていた。
初めは、パニックにならないように、変更に戸惑わないようにってAのことをものすごく気にかけていたんだけど、そんな必要はなくて。
むしろ、それがすごくいい影響になっていた。
「あそこ、お客さんに手振ってごらん?」
「楽しいー?」
「そうそう、次回るー!」
「元気いっぱいな!自己紹介しておいでや?」
自分よりも、それ一回りも小さいオーディション生のちびっ子たち。
もちろん、中には大きい子もいるけど、その大半はAの入所よりも後に生まれたような子たち。
心の底から可愛くて仕方ないっていう感じで、ずーっと優しく声をかけていた。
それは、Aのパフォーマンスにも表れていた。
赤「めっちゃ楽しそう」
緑「ね。…Aさ、憧れの先輩とか、Jr.で目標にしてる人って時に…A挙がったことないって、気にしてたんだよ」
赤「あー、そんなの俺らもあんまりなくない?」
緑「もちろん、Aだって、名前を挙げてほしいってわけではないと思うけどさ。自分を見て、この世界が“楽しいんだ”って、伝えたいんだと思う」
Aを見る、オーディション生のちびっ子たちの目は、キラキラしていた。
それは、Aも同じ。
キラキラ輝く目で、誰よりも楽しそうだった。
例えるなら…例えるなら、幼い日の慎太郎みたいだ。
苦しくないはずがない。
うまくいかないことだって多いし、いまだに何が正解かなんて分からずにもがいている。
でも、Aの全身が、そんなの全部跳ね除けて、この世界に彼女が身を置き続ける意味を体現していた。
赤「あの子は、受かる気がする」
緑「篤志くんね」
「なーに、2人でコソコソしてるの?」
赤「してませーん」
緑「受かるといいね、Aが気にかけてた子」
「受かるよ。篤志は、受かる」
彼の自己紹介を、愛おしそうに見ながら言葉を紡ぐAの声は、堂々と、真っ直ぐに伸びていた。
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作者名:かん。 | 作成日時:2020年12月15日 20時