547話 ページ47
【樹】
Aも行きたかった…っていじけた顔を見せてくるのが冗談なのは、さっきまで慎太郎とメッセージを送り合ってたから分かってる。
「こーくんからの、預かり物はー？」
青「家に届くようにしてまーす」
「えー…今欲しかったぁ…」
青「聖が、Aの治療落ち着いたら連れてくって言ってたから、また一緒に行ってあげて？」
そう言えば、仕方ないなぁ〜なんて言いながらも満更でない様子のお嬢を見て一安心。
昨日の夜、聖たちと出かけている最中に来た、“A不調”のメッセージに、気が気ではなかったから。
久々の3日連続の休みで、前から計画していた兄貴との旅行だったから、樹くんは帰ってこなくていいっていうAの言葉に甘えさせてもらったけど。
青「はい、進行表。と、スケジュール変わったやつ、これね」
「ありがと〜」
YouTubeの撮影は事務所で撮ることも多くて、そのままレッスンや打ち合わせが入っていたりする。
今日もそんな感じのスケジュール。
横アリの舞台裏として、今回はYouTubeでも密着してくれるから、それも兼ねて。
決して手を抜くわけじゃないけど、一応Aには、程々になって声をかけておく。
「末っ子は、慎。私やないー！」
緑「いや、俺さ、結構お世話してるよ？」
青「慎太郎かAで迷ったけど、北斗はねぇわ」
7人横並びでのこのゲーム、楽しそうに参加しているAだったけど、次第に口数が減ってきてるのを見ると、まだ本調子ではなかったかなって。
青「お嬢、ガス欠気味なんだけど」
緑「ほら、やっぱり末っ子やん」
時々チラッと隣に座るAに目を向けると、ボーッとしてるから、コソッと声をかけると、返事はないものの、しんどい時にはギュッと手を握って合図を送ってくれたから、カバーができた。
いや、並び隣にしておいて正解だったなって思う。
「ありがと、助かった」
青「いいってことよ。てか…これでちょっとは甘えやすくなった？」
「ふふっ、まだ分かんないよ」
普段なら、こんな時に俺に向けてくるのは寂しそうな目だったけど、今日向けられたのは、優しい、少しだけ甘えた目だった。
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作者名：かん。
| 作成日時：2020年12月15日 20時
