435話 ページ35
【北斗】
ホテルの部屋割りは、一人部屋をあてがうこともできたようだけど、A本人の希望もあって、結局いつもと同じメンバーになっていた。
俺と、樹と、お嬢の3人で一部屋。
いつもと違うのは、樹のどんよりとした…そして、少しだけ悲しそうなオーラ。
それを無理に吹っ切ろうとするAの空元気がまた、そんなオーラを助長していた。
「大丈夫だよ、樹くん。片方くらい、どうってことないから…こんなの、慣れとる。どうってこと…」
青「どうってことないわけ…ねぇだろ。…いつから？耳、いつから聞こえてねぇの？」
「…今日の、朝。…朝、起きたときから…なんか、変やった。昨日までは、ちゃんと聞こえてた。でも、朝…いつもみたいに起きれんくて…。ほっくんの声も…うまく聞こえんくて」
言われてみれば確かに、Aは今日の朝、何度も俺の話を聞き返していたような気がする。
元々朝が苦手なAは、さほど俺の話を聞いていなかったり、よく聞き返してきたりもするから気にしてなかったけど…今日のはそういうことだったのか…。
樹とAが話す傍ら、Aがポツポツと話してくれている症状や感覚をケータイで適当に検索をしてみれば、一番当てはまる気がしたのは“突発性難聴”。
これなら…対応が早ければ、治るかもしれない。
黒「…A、すぐ病院行こう」
「えっ…今から？」
黒「うん、今から。…それ、突発性難聴かもしれない。それなら早めに治療できれば治るみたいだし。逆なら…治療が遅れたら、治らない可能性が出てくるから」
スマホの画面を見せながらそう説明すれば、すでに俺の話を聞きながら動き出している樹。
樹がレンタカーの手配を済ませ、その間に俺がマネージャーと病院に連絡をしてみれば、すぐに来てもらって大丈夫だと言ってもらえて。
我ながら、よくできた連携プレーだったと思う。
青「大丈夫。どうなっても、Aの味方だから」
黒「ん、順番きたね。どうする？樹と行く？」
「…ほっくんも、来て」
診断された内容は、突発性難聴ではなかった。
ざっくり言えば、これは脳腫瘍の後遺症とのこと。
それでも、“きちんと、治療すれば良くなりますよ”という初めて会った目の前の先生のその言葉だけが、俺たちに唯一の安心を与えてくれていた。
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かん。(プロフ) - 美紀さん» ありがとうございます！ (2020年11月10日 20時) (
レス) id: bd45e6ad2b (このIDを非表示/違反報告)
美紀 - 移行おめでとです最高ですコロナウイルスに気をつけてくださいね (2020年11月10日 18時) (レス) id: 8204dae0fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かん。
| 作成日時：2020年11月9日 16時
