432話 ページ32
【慎太郎】
「おっと…」
緑「危ない危ない、気をつけて？まだ時間あるし、ゆっくり行こうよ、ゆっくり」
「ん、ゆっくり行く。あぁ…一人で行けるし、慎先に行ってもええよ？いつもと同じとこやんな？」
緑「いいえ、そんな置いてくようなことはしません。ふふっ。エスコートしますよ、先輩？」
そんな風にちょっとふざけて手を差し出せば、何言ってんのって笑いながら、俺の手にそっと重なる小さな手。
その手に、最近までつけていなかった指輪が通っているのに気づいたのは、さっきのリハの時だった。
普段からAはアクセサリーをあまりつける方ではなかったけど、最近は指輪やブレスレットをよくつけているのを目にする。
緑「かわいいね、この指輪」
「うん？あぁ…これはね、この間ご飯食べた時にちい兄がくれたの。なんかね、前に樹くんも言ってた気がするんやど…指には、一つひとつ意味があるんだって」
緑「意味？」
「そう。モチーフとか、それぞれの指とか。ちい兄、しばらく会えんくなってまうからさ。お守り代わりにこれ買うてくれてん」
そう言うA。
指輪が通っているのは、左手の小指。
ここは、チャンスを掴む指なんだって。
緑「あ、そういえばさっき、森田くんと練習してた？」
「うん。めっちゃ色々教えてもらった！クセとか、あと、多少我慢してでも、こういうところは決めないとカッコよくないとか…」
緑「ふふっ、相変わらず贅沢だこと」
「…指輪はさ、気持ちの持ちようとして付けてるけど。でもやっぱり、チャンスは…こうやって、自分で掴みにいかなあかんなって思うから」
緑「A…」
「認めたくないけど、ほら…私は、足にハンデあるし？いくら先に入ったとはいえ、みんなと対等にステージに立つには、誰よりも頑張んないとだから」
笑い飛ばした、なんてことない表情でAからサラッと放たれた“ハンデ”の言葉が、何故だか妙に心に引っかかった。
側から見たら、たしかに義足はハンデかもしれない。
でも…それって、Aの少しだけ弱い部分なだけであって、別に義足だからどうってわけじゃないと思うんだ、俺は。
…って、面と向かって、少しだけ自嘲気味に笑ったAに言ってやれなかったのは、俺が少しだけ大人になってしまった証拠だったのかな。
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かん。(プロフ) - 美紀さん» ありがとうございます！ (2020年11月10日 20時) (
レス) id: bd45e6ad2b (このIDを非表示/違反報告)
美紀 - 移行おめでとです最高ですコロナウイルスに気をつけてくださいね (2020年11月10日 18時) (レス) id: 8204dae0fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かん。
| 作成日時：2020年11月9日 16時
