. ページ5
【目黒】
北斗くんの言葉に背中を押されて、もう一度向かったAの待つ病室。
ここを出る前と変わらず、Aは壁の方を向いて顔を隠していて、泣いてるのかどうかさえ分からない。
でも、その前身が“悔しい”って言っているように見えるのは、仮にも養護の教師として数年働いて、いろんな子どもたちと向き合ってきたからだろうか。
目黒「A…？」
「…」
目黒「…聞きたくないかも知んないけど、俺の独り言だと思っていいから」
そう前置きをして話し始めても、Aがこちらを向く気配は一向にない。
それでも俺は、やっぱり伝えたくて。
目黒「今日、残念だったね…。ごめんね、Aは大丈夫って言ったのに。…俺さ、あんな泣くほど、Aが今日のこと楽しみにしててくれたの、すっげぇ嬉しかった。でも…それでも、悲しませる結果になるのわかってたけど…それ以上に心配だった」
目黒「Aが最近調子良くて楽しそうなの、俺も嬉しかった。だから、Aの悔しさからしたら全然だけど…俺も今日のことはちょっと悔しい」
油断していたわけじゃない。
十分に気をつけてはいたはずだし、何があってもいいように準備だってしてた。
それでも、時と場所を選んでくれないのが病気で。
Aが“こんな体…”って言ったのだって、気持ちが分からないわけじゃない。
目黒「俺ね…Aのこと、好きだよ。ずっと、これから先も一緒にいたいと思う。それなりに…覚悟だって、決めてる。Aの、全部を受け止める覚悟」
目黒「上手く言えないけど…。とにかく、ちゃんと解りたいんだ。同じ苦しみを味わうことはできないけど、苦しい気持ちを知りたい。ずっとそばにいて、どんなAも受け止めたい」
目黒「きっとまた、悔しいこと…あると思う。思い通りにならないことだって、たくさんあると思う。けど、まだこれから先の方が長いから。何回だって、やり直そうよ。2人なら、できそうじゃない…？」
ようやくこちらを向いてくれたAは目を真っ赤にしていて、珍しく、わんわん声をあげて泣いた。
大丈夫、どこにも行かないよ。
だって君は、俺が初めて家族以外に“この人のためなら何だってしよう”と思えた人だから。
だからもう、“こんな”なんて、言わないでね。
君は俺の、タカラモノだから。
-Fin-
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 592人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しずか(プロフ) - お話書いていただいて、ありがとうございました！かん。さんのお話は、いつも本人の心情や周りの愛情こもった気持ちがとても素敵に書かれているなと思います。これからもお話の更新を楽しみにしています！ (2022年4月25日 22時) (
レス) id: 2e5c54c5f4 (このIDを非表示/違反報告)
かん。(プロフ) - しずかさん» リクエスト、ありがとうございました！なかなか構想がまとまらず、お待たせしてしまってすみません。。。続編にてお話を上げさせていただいてます！リクエストに添えていれば嬉しいです♪これからもどうぞよろしくお願いいたします！ (2022年4月25日 20時) (レス) id: bd45e6ad2b (このIDを非表示/違反報告)
かん。(プロフ) - ぷりんさん» リクエストいただきありがとうございました！時間がかかってしまいすみません(T ^ T)続編にて書かせていただきましたので、楽しんでいただければ幸いです！ (2022年4月16日 12時) (レス) id: bd45e6ad2b (このIDを非表示/違反報告)
かん。(プロフ) - ﾎﾟﾎﾟﾝさん» たくさんコメント書いていただきありがとうございます！(；ω；)とても嬉しかったです！また、しれっと公表した2つのお話のつながり、察知して気づいていただけて、ちょっぴりニヤニヤしてしまいました笑 これからも楽しんでいただける作品が提供できるよう頑張ります！ (2022年4月7日 23時) (レス) id: bd45e6ad2b (このIDを非表示/違反報告)
ﾎﾟﾎﾟﾝ(プロフ) - 長文にて失礼いたしました。これからも楽しみにしています😊 (2022年4月7日 14時) (レス) id: dde2180564 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かん。
| 作成日時：2022年1月23日 21時
