334話 ページ34
【慎太郎】
風磨「お前ら、ギスギスしすぎ。なぁ、海行こうぜ」
多分、そんな風磨の些細な一言だったと思う。
もちろん全員が行くわけではないけど、乗り気の俺たちは当然。
ずっと上手くいかないことばかりで、でもそれを抜け出すための糸口も見つからなくて、当たって、ぶつかって、またモヤモヤして。
それがこんな最悪な空気に直結してるくせに、ひとたび仕事を離れれば、ただのダチみたいにハシャいで、仕事なんか忘れたり。
そんな切り替えが上手くできるやつばかりじゃないことだって、気づいてたけど。
「なんで私まで連れてこられてるのよ」
風磨「いーいじゃん！お前は絶対なの」
「意味わかんない。…暑いやん、みんなは水着でいいかも知んないけど…わたし、この足やし」
風磨「バカ、関係ねえわ。Aは、A。俺はAと海行きてーんだよ」
そう言って、自分の左足に目を落とすAに見向きもせずに、強引に連れ出す風磨。
思えば風磨は、今回の公演の打ち合わせでも、振り起こしやリハーサルでも、Aの足について一切触れたことはなかった。
時々Aが音に参ったり、体調を崩したりしても、それもさりげなくしか触れない。
緑「透けないスカート、プレゼントするから。な？Aも行こうよ。…息抜き。俺は、風磨に便乗するくらいしかしてあげられないし」
「ん…。しゃーなしやで…。でも私、ほんまに海には入られれへんよ？やから…海入らん代わり…海の家の、焼きそば食べたい」
緑「ふははっ！いいよ、そんなのいくらでも奢る！」
海で焼きそばが食べたいっていう、すぐに叶えられそうな願いを口にする、少しだけ年上のAが可愛くて、つい笑ってしまう。
最近、こんなことあんまりなかったなぁ…なんて思ったり。
海について、真っ先に海に飛び込む奴もいたけど、義足のAは、やっぱり海に入ることはできなくて。
どころか、水着にもなれないしなって。
「ここで、みんな見てるからええよ」
緑「疲れたら帰ってくるわぁ」
海に入って、浜辺で遊んで、その度にチラチラと横目に映るAは、最近の思い詰めた表情はなくて。
本当に楽しそうに俺たちを見てたから、俺はなんの根拠もなく、何に対してかも分からずに、ただそのAの表情に安心してたんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 205人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かん。(プロフ) - 美紀さん» 美紀さん、いつもありがとうございます！これからも末長く、この小説をよろしくお願いいたします(^^) (2020年10月8日 21時) (
レス) id: bd45e6ad2b (このIDを非表示/違反報告)
美紀 - 移行おめでとです最高ですコロナウイルスに気をつけてくださいね (2020年10月8日 18時) (レス) id: 8204dae0fb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かん。
| 作成日時：2020年10月5日 18時
