無限の未来 5th season (ページ44)

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244話ページ44

【樹】

青「どったの？なんかあった？」

「いや、なんか…緊張して…」

青「…いける？楽屋で休んでてもいいよ？モニターとかあるから、見れないわけじゃないし…」

「んーん、大丈夫。きっとそのうち、落ち着くと思うんやけど…」

緊張してお腹が…なんて、今からステージ立つ奴が言うようなこと言ってるAだけど、こいつは今日ステージに立つわけではない。

それでも、ステージに立つ誰よりも緊張しているのは、周りからすればもはや謎でしかないんだろう。

でも、なんとなくAが緊張する理由が、その理由に込められた裏側が、俺にはわかるような気がしてたから、ギリギリまで一緒にいてやりたくて。

俺たちが6人でステージに立つのを、生で見るのが久々すぎて緊張するらしい。

それはきっと…“自分がこれから入り込む場所”をみることとイコールだから。

黒「Aって、こういうステージ、全然緊張とかしないタイプじゃなかったの？」

「いや、さすがに…久しぶりすぎるもん。この空気も、なんか…うん、緊張する」

青「あ、そっか…。そもそもステージ自体が久々か」

「最後は…いつだったかな…」

本当は今日だって、彼女はこのステージに俺たちと一緒に立ちたかったはずだ。

この公演のことを知ってから今日までに、1公演分まるまる通してできるようになるまで、Aは諦めなかった。

練習だろうがリハだろうが、俺たちについてきては、隅っこで一緒に練習してきたこと。

ただ通せるようになったわけじゃないし、義足でも十分に見せられるように、Aの今できる精一杯をやり遂げてきたこと。

誰よりも、俺たちが一番そばで見ていた。

桃「大丈夫。あの時…大丈夫って、Aが言ったんだから。だから、大丈夫」

「…うん！」

Aの腕には、ミサンガにつけたが光っていた。

もちろん、俺たちの腕にも同じように、色違い。

公演前の円陣を組んだ中にはAもいて、久々に肩を組んだAは、体が骨張っていた闘病中と比べて、少しだけ元の体に戻ってきていた。

青「見てろよ、A」

「ありがと、樹くん」

青「これは、まだ完成じゃねぇから…」

“SIXTONES”

ジャニーさんが俺たちにつけたAの意味が、少しずつ理解できるようになったのは、この日が最初だった。