無限の未来 5th season (ページ18)

今日:3 hit、昨日:24 hit、合計:151,168 hit

218話ページ18

【佐野】

次の日の試合、昨日あんなことがあったから、Aは監督から全てをストップされていた。

まぁ、さすがにこればかりは仕方ないだろうと思い、それでもAはやるといって聞かないだろうし、そうなったら意地でも止めようと話したその後。

俺たちの予想をいい意味で裏切って、素直にストップを受け入れたA。

昨日ほどになってしまうと本人もまだ昨日の恐怖心が残っているのか、普段なら食い下がるのに、今日は全く抵抗せずに。

佐野「ついに、動かざるを得なくなったな」

数原「んな言い方すんなって…」

佐野「だってその通りだろ。これで、“マネージャー”ってポジションの仕事は1人でやるしかないんだから」

数原「そうだけどさ…。あ〜…言い出したの俺やけど…マジほんとに心配しかないわ…」

佐野「…腹括りなよ」

Aが動けないとなると、補欠メンバーや下級生が準備やスコア、諸々の作業を請け負うんだけど、今日は誰も動かない。

あえて、動かないと決めた。

動かないと決めて、マネージャーとしての役割を全て担ってほしいと、そう告げたのは、キャプテンである俺。

昨日のAの姿を見た益田が、どう動くか…悪い言い方をすれば、試している。

佐野「いや…。は？なにしてんの？なんでお前が、ベンチにいるの」

「佐野、ごめん。やっぱり心配やから…。監督も、動かんと見守るんやったらいいって言うてはったし、スコアは私つけるよ…。そんなら、動かんくても大丈夫やし。足にも負担、かからへん」

佐野「いや、ならせめて奥で…」

そう言って、ベンチに腰掛けるAを説得していた俺たちの前に来た益田。

無言でAを制すその光景に、一瞬ヒヤリとして、思わずAの背中をさする。

A本人も緊張したのか、背中にはいつもより早い鼓動が伝わってきた。

ジッと対峙した2人の間に流れた少しの沈黙が、冷たい。

益田「…私、書きますから」

「…えっ」

益田「スコアも、書きますから。Aさんは、奥にいてください」

「…わかっ、た。ほな…おねがい、します…」

小柄なAよりも10センチ以上身長の高い、有無を言わせない迫力の益田。

圧倒されたのか、大人しくスコアを渡して、そのままベンチの後列に移動するAは、驚きながらも少し嬉しそうだった。