無限の未来 5th season (ページ12)

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212話ページ12

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高校3年生を迎えてしまった私たちにとっては、遠征も試合も、あと数えるほどしか残っていない。

かわいい後輩たちと過ごせる時間も、日に日に短くなっていく…のもだけど、なにより家族のように過ごしてきた同期とも。

心を、苦しくなんて…している暇、ないんだ。

長谷川「Aさん？荷物、ここに置いておきますね。他にもなんかできることがあれば、言ってもらえたら！」

「ありがとね、まこっちゃん。とりあえず、いまは大丈夫やと思う。助かった」

最近になってようやく義足の着用許可が出たばかりの私のことを、普段から率先して助けてくれる一年生のまこっちゃん。

数原と壱馬の部屋子で、リーダー気質。

試合や遠征では、自分も率先して動きつつ、周りもよく見られているまこっちゃんは、私たち3年からしたら弟のようだけど、それでも頼れる存在。

佐野「お、Aそこなんだ。んじゃ、今日俺、お前と部屋隣だわ。…何かあったら呼んで」

「うん、ありがとね」

佐野「…なんかなくても、別に頼ってくれたらいいし」

「なん、それ。佐野にそんなん言われたら、びっくりしてまうやん」

佐野「うるせぇな。あ、反対の隣は涼太だし。お前、無理してたら隠してたり、逃げられると思うなよ？」

部屋割りを見た佐野が、スマホをヒラヒラさせながら教えてくれる。

と、同時に左足を指差して、口パクで“痛む？”と聞いてくるあたり、観察力の高さにビビる。

私自身でさえ、ちょっとだけ違和感があるくらいだったのに、きっと佐野が気づいてるってことは、同期はみんな察してたりするんだろう。

隠し切れないなぁ、なんて。

ただ、まだ無茶するほどでもなければ、自分でもなんとか対応できる。

今は大丈夫、とだけ伝えて試合に臨んだ。

そんなことに、振り回されてなんかいられない。

「益田さん、今日…準備任せるね。私、見てるから」

益田「…はい」

「…がんばって」

益田さんを横目に見ながら、私は私の準備を進めていた。

不安はあるけど、信じなきゃとも思いながら、ソワソワしてしまう。

“この伝統校を守ろうと思えないなら、辞めて欲しい”

そう言ってしまったのは、他でもない自分だ。

彼女がどんな選択をするのかは、この遠征で見届けなくちゃいけない。

そんな思いでいっぱいだった。