無限の未来 5th season (ページ11)

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211話ページ11

【数原】

数原「怖くなったら、いつでも逃げてこい。俺が、外にいるから」

「…っ、うん」

“怖くなったら”なんて言ってはみたけど、Aの表情からすれば、もう相当にトラウマを抱えているのは一目瞭然だった。

それでも、後輩のため、チームのためと動こうとする力の方が勝るんだから、俺たちのマネージャーは、強い。

もちろんAの強さなんて、ともにこの部に入部した頃からずっと感じていたけど、今日その姿を、また感じさせられた。

ここから逃げ出したいくらいに、怖くて仕方ないはずなのに、そんな素振りを見せないようにと、必死だった。

送り出したAの手は震えていた。

そんな強さに背中を押したけど、どうなることかと緊張しているのは、俺も同じだった。

Aのいない間もずっと見守ってきたけど、そもそもの上下関係さえも何も考えない益田の姿に、俺たちは正直諦めも感じていた。

むしろ、Aが部を離れたことによって、ケアをできる人がいなくなったからなのか、彼女のできなさはこれまで以上に目立つばかりで。

ルールは覚えない。

もちろんスコアも書けない。

部員のことも見ているのか、見ていないのか…。

そんな中でも、後輩のプレイヤーたちがうまく動いてくれているのは、この1年間でAが後輩たちを鍛えてくれたからでしかない。

自分が…いつ、どうなったって大丈夫なように。

そんなことにも気付いて、改めてAへの尊敬と感謝が募っていた。

しばらくすれば、Aは少し俯き気味にこちらに歩いてきて、うまく行かなかったのかな…なんて。

「数原、ありがと。話してきたわ…」

数原「おん。…で、どうやった？」

「んー…どうなんやろ。すぐに心入れ替えて、とはならんと思うけど。とりあえず…私が彼女に言いたいことは言えたかな。あれで変わらないなら…もう、無理かな」

相当な覚悟を持って、正面から後輩マネージャーと向き合ったこいつの気持ちが、少しでも届いていれば。

いや…届いていないと、報われなさすぎる。

「遠征の間に、ルール覚えらんなかったら、退部も考えるくらいのつもりで行けって言うといた」

数原「ほんまけ！？」

「だって…ムカついたし」

相当怖かっただろうに、そこまで真剣に向き合ったAが、俺は誇らしかった。