無限の未来 4th season (ページ9)

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159話ページ9

【樹】

正直、怖くて仕方がなかった。

“だんだん…Aがぐったりしてきて…声かけても、反応がほとんどなくて…。これおかしいなって、ヤバいなって思って…先生たち、呼ぼうとして…。そしたら…急にっ、Aがっ…が…ガタガタ痙攣っ、し始めてっ…”

勇人くんに話しながら、そん時の光景思い出して、震えが止まんなくて。

あの時、目の前でガタガタと全身を痙攣させるAを横目に必死で先生を呼んだ。

それからは、あまりよく覚えていない。

頭真っ白で、とにかくAが消えちゃわないように、聞こえてるかも分かんないけど、ガラスの外から必死にAの名前を呼び続けたんだと思う。

そうしてるうち、あっという間にAがどこかに運ばれて、気づいたらAの兄ちゃんたちがいて、あれよあれよという間に緊急手術になっていた。

突然の知らせに、きっと兄やんたちだって気が動転してたはずなのに、それでも、しゃがみ込んで動けなくなってた俺の背中に大きな手を当てて、“絶対大丈夫”って、何度も声をかけてくれた。

勇人「ありがとな、樹。A…樹がいてくれて、心強かったと思うわ…」

青「…でも俺、何も」

勇人「ごめんなぁ、怖い思いさせて…。ごめんな、苦しかったよな、1人で…」

手術を終えて、ようやく扉が開いた時に、深刻そうな顔して先生に告げられたこと。

Aのがんは、肺と脳に転移をしていたらしい。

最近ずっとAの調子が悪かったのは、免疫も下がっていたといえ、根本はそのせいだったみたいだ。

毎日お見舞いに来てたのに、何も気づいてあげられなかったことが悔しい。

先生も、すぐに見つけられなかったことに悔しがってた。

勇人「やっぱり、小さい頃からずっと、樹はAのヒーローだなぁ…俺、負けそうやわ」

青「えっ…」

勇人「いつも、守ってくれてたんやろ？Jr.の頃から、ずっと」

青「どういう…」

人気のない病院の廊下に、俺の声が虚しく響いた時、赤く光っていた手術中のランプが消えた。

肺の腫瘍も脳の腫瘍も、ほとんど取り除けたらしい。

でも、肺は一部を切除しないといけなくて、脳もまだ放射線治療が必要になるらしい。

勇人「Aが起きてこのこと知ったら、なんて言うんかな…」

勇人くんの言葉は、重く俺の胸に響いた。