無限の未来 4th season (ページ37)

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187話ページ37

【数原】

センバツの出場は、叶わなかった。

選考の基準にかかったかどうかでいえば、正直めちゃくちゃギリギリなところで、出られるかどうかは…かなりの、瀬戸際だと言われていた。

それでも巷では、“まさかの” “惜しくも…”なんて書いてくれているけど、ダメなものはダメで、選ばれなかったことが事実。

過ぎたことを悔やんだって、仕方がない。

事実に絶望したって仕方なくて、それでも春は、夏はやってくる。

最後の、夏が。

「うー…さぶぅ…」

数原「風邪ひくなよ～。しんどかったら、今日は中でもいいし」

「いや、いけるよ。寒いってだけやし。あぁ…けどちょっと手貸して！さすがに今日は、滑る…。ケガしたら、元も子もないってやつっしょ？」

数原「はいはい。ん、手貸しな」

「あぁ、待って。力強いっ…」

普通の人が半年以上かかるとされるリハビリを、ものの数ヶ月で乗り越えた身体能力の持ち主であるAでも、さすがに初めての義足で迎える冬は危険と隣り合わせ。

凍結したアスファルトを歩くのは、まだ怖いらしい。

普段の生活だったら、そんなに気にしない些細な変化も、今のAにとっては大きな変化。

ほんの少し凍った地面も、なんとなく普段よりぬかるんだグラウンドも、上手く折り合いがつかずに転べば、大怪我につながりかねない。

そしてそれは…。

「これで転んだなんて言ったら、絶対、次病院で雷落ちるからね…」

片寄「ゆっくりでええぞ～」

「今日は室内の方が良かったかな…」

佐野「今更だろ。ここまで来たら、戻るのも危ねぇわ」

なんて、コントみたいなやりとりをしながら向かう練習。

手を貸して欲しい。

痛い。

ちょっと待って。

苦しい。

しんどい。

できない。

助けてほしい…。

これは、この数ヶ月で、Aが俺たちに言えるようになった言葉の数々で、俺たちがずっと、Aから書きたいと思っていた言葉たち。

言葉だけ見たら、マイナスに思う人だっているかもしれない。

でも、俺たちにとっては、プラスすぎる言葉。

「さんきゅ！」

これも、Aなりの言葉だ。

困ってる仲間を助けるのなんて当然という俺たちに、助けてもらったら感謝するのも当然だと言い放つマネージャーの、ちょっとだけ軽めの、でも何よりも心のこもった感謝の言葉。