無限の未来 4th season (ページ27)

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177話ページ27

【片寄】

年末の休暇を関西の実家で過ごし、寮に帰ってきてからのAは、どことなく空元気だった。

それでいて、有無を言わさないような何か…バリアみたいなのがあるみたいで、踏み込めない、そんな感じ。

片寄「A、お迎え来てんで。荷物まとめた？」

「…」

片寄「おーい。Aー？…Aさーん？」

ほら、今だってボーッとしてて、俺の声は届いていないように思う。

今日からは一旦入院して、通院での治療に向けて調整をするってのに、こんなんで大丈夫か？なんて思ってしまうほど…。

片寄「A？お兄さん、お迎え来てるで！荷物どこにあるん？持ってったるから…」

「え…あ、うん。ごめん、ありがとう」

片寄「あー、久々に静かな1週間になりそうやな」

「ふふっ。なん、それ。どうせ私おらんくても、皆うるさいやろ。大丈夫やって」

ほら、笑い方がぎこちないことくらい、2年も一緒にいればわかるんだよ。

でも、今回ばかりは俺には触れられない。

「片寄、荷物ありがとう」

片寄「おう」

「ほな、行ってくるね？」

片寄「…ん。ちゃんと、帰ってくるんやで」

「ははっ…当たり前やん」

浮かない顔をしているのは、元気がないのは、当たり前に治療のせいではなくて、年末年始の諸々。

俺も、帰省中に目にしたその情報。

興味のあることじゃないし、俺なんかは、へ〜…くらいにしか思わなかったことだけど、当事者だったAが、どれほどそれに対して思いが募っているのかなんて…。

それを、思えないほどの仲でもなかった。

俺だけじゃなくて、きっと部員みんなが気づいていることだけど、誰も何も言わずに送り出すしかできない。

もどかしいけど、これは俺ら全員で決めたこと。

数原「大丈夫。あいつが帰ってきたとき、安心できるようにしててやれば、大丈夫」

片寄「うん。…アイツ、帰ってくるまでにもっと、強くなってよう」

数原「俺らは、野球でしかあいつを笑わせられんからさ」

片寄「…だな」

この1週間の入院での調整がうまく行けば、Aはまたここへ戻ってきて、俺らと野球ができる。

だから、本当は余計なこと考えずに、今はとにかく治療に集中してほしい。

全員がもどかしい気持ちを抱えているけど、俺たちに今できることは、ただひとつしかなかった。