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164話 ページ14

「…よし」


目の前には40人分のおにぎり。

前までは、こんなの当たり前の光景で、休日の長期練習ともなれば、これを何回も繰り返していたことが、相当昔のことのように感じる。

目の前に並んだそれを見れば、ついこの間までそうしてたようにも思うけど、現実に体感として自分が思っているのは、はそんなにって感じ。

久々に作った割には、我ながらよくできたもんだと思うけれど。


数原「おう、おはよ。おにぎり、ありがとな。顔色、あんま良さそうには見えんのやけど…体調どう?」

「うん、大丈夫。いつも、あぁ…特に朝は、こんな感じ続いてんの、ずっと」

数原「そっかぁ。…なんか、別にそんなにずっと離れてたようには思わんけど、色々…あれやな。なんか…やっぱ、ちょっとは変わってんのな。あ…!マジで体調ダメんなった時は、近くおるやつに言えよ?」

「うん、わかった」


退院して、戻ってきてからは、みんなが少し過保護になった気がしないでもない。

でも実際、私自身治療を中断したことで大きく不安を抱えている。

この、中断している期間にだって、きっと病気はどんどん進行をしているわけで、間違っても、治療をせずとも勝手に治っていく病気なわけがない。

だから、過保護にしてもらえるくらいが…本当はちょうどよくて、安心感を得られているからこそ、ここに立っていられるのかもしれない。


片寄「おはよ。あ、今日トスお願いな」

「了解ー!」

片寄「A。好きにやったらええんやで」

「…ん?」

片寄「甘えられるところは甘えて、挑戦していったらそれでいい」


やっぱりこいつは、なんでもお見通しだ。

抱えてる不安も、それを押してでもこれまで通り振る舞いたい気持ちも、全て見抜かれている気がする。

肺の手術をして、呼吸の機能が落ちたこと。

脳の腫瘍は、100%取り除けたわけではないこと。

そして変わらず、時々襲ってくる幻肢痛への恐怖。

でも、治療を中断してでも合宿に参加すると決めた以上、そんなの言い出したらキリがないんだ。


「よし。片寄、グラウンド行くよ!」

片寄「はいはい。んな慌てんな」

「…ありがとう」


前を歩く片寄に、いまの言葉は聞こえてないかもしれない。

不安も強がりも、笑って受け止めてくれる同期。

やっぱり、帰ってきてよかった。

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美紀 - 移行おめでとです最高ですコロナウイルスと熱中症に気をつけてくださいね (2020年9月7日 14時) (レス) id: 8204dae0fb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かん。 | 作成日時:2020年7月14日 17時

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