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162話 ページ12

目が覚めたときには、勇人兄ちゃんが隣にいた。

私が起きたことに気づくと、なにも言わずにぎゅーっと抱きしめて、ただずっと頭を撫でてくれた。

なんか、それさえも窮屈な気がして、でも兄ちゃんがぎゅっと抱きしめるその強さを思うと、どれほど心配かけてしまったのかがヒシヒシと伝わってくるみたいだった。

だから、拒否なんてすることできなくて、されるがままに兄ちゃんのぬくもりの中。


勇人「大変だった。急に兄貴から、居なくなったって連絡くるし。やっと見つけたと思ったら、A倒れてるし…真っ青やし…呼吸も弱くて…」

「うん…」

勇人「…治療、嫌になってしもた?」

「…っ」


正直、わからなかった。

治療が嫌になったのかと問われれば、そういうわけではなくて、自信を持って…もう嫌だ、なんて言えたことじゃない。

…と、思う。

ただ、生きることも、病気が治らないことも、全てがどうでも良くなってしまっただけ。

もはや、治療が嫌だとか…そんなことすら、思えなくなっていたんだ。


勇人「なんちゅー顔してんねん。別に、怒ってるわけやないで。…背負わせすぎたな。樹と北斗も…さっきまで居ってん。悔しそうやった、アイツらも。でも…誰も、怒ったりしてない。迷惑だなんて思ってない」

「…っん」

勇人「もっと早く、Aにいろいろ…鬱陶しいって思われてでも、聞くべきやった」

「そんなこと…」

勇人「あんねんて。逃げ出した…お前だけ、悪いわけちゃうよ」


にいちゃんの言葉が…優しくて、苦しかった。


勇人「もし、Aが…もうこれ以上治療したくないんやったら…」


“治療、やめたってええんやで”


思ってもなかったことを言う兄ちゃんに、動揺したのは私の方だった。

まさかそんなこと言われるとは思ってなくて、なんて言葉を返したらいいのかがわからなかった。


「やっぱり、冬合宿…行きたい」

勇人「うん」

「でも、治療せなあかん…それも、わかる…」

勇人「うん」


バラバラになって、自分さえわからなくなった気持ちを、うんうんと、ゆっくり、優しく聞いてくれる兄ちゃん。

正直、あんなことして、みんなから怒られる思ってた。

でも、怒らんよって。

限界やったなって。

ごめんなって。

どこまでも優しい兄ちゃんに、甘えてしまうんだ。

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美紀 - 移行おめでとです最高ですコロナウイルスと熱中症に気をつけてくださいね (2020年9月7日 14時) (レス) id: 8204dae0fb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かん。 | 作成日時:2020年7月14日 17時

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