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161話 ページ11

【北斗】

Ns.「あ、松村くん、田中くん。ここ来るまでに、Aちゃんと会ったりしてないかな?連絡取ったりとか…。Aちゃん、急にお部屋からいなくなっちゃって…。今お兄さんには連絡したんだけど…」

青「えっ…」


舞台稽古の合間、結構な時間が空くけど一回家に帰るのには時間が微妙だし、稽古場ではまたバスには時間がありすぎて。

それならばと、稽古先からほど近いAのところへ行こうと、樹と2人でもう慣れてしまった場所へ来たのはいいんだけど、まさかの事態。

病室には、まだ明らかに途中かけの点滴と、虚しくシューシューと気体だけが流れる音を立てたままの酸素マスク。

ビリビリに破られた薬の説明書や、投げ捨てられ散乱した教科書やノートに、不自然に倒れたパイプ椅子。

その一つひとつが、Aの悲痛な心の叫びを物語っていて、苦しささえ感じた。


青「探そう。なんか…マジで危ない気がする…」

黒「うん…」


あの日の緊急手術を受けて、肺が小さくなってしまったことも聞いた。

ここ数日は、電話さえ苦しいからとメールでのやり取りしかしていなかったわけだし、酸素マスクを外した状態で、今のAが遠くまで行けるとは思えない。

Aが持っているはずの携帯は、いくらかけても繋がらない。

それが、拒否ではないことを、せめて昨日までと同じように、電話に出ることさえ、話をすることさえ…っていう、そのせいだって思いたかった。

しばらく探したけど、一向に事態は変わらなくて、途中で連絡を受けた勇人くんも病院に着いたみたいで、合流して手当たり次第に探すけど、見つからない。


勇人「とにかく…無事でいて…」


誰も怒らないから。

だから無事でいてほしい。

そう思いながら探し続ける。


Aを一番に見つけたのは、俺だった。


黒「いた…いたっ…!Aっ、A!」


夕方、診療が終わり人気のなくなった外来棟。

その一番奥にある人目につかない場所。

そこで、真っ青な顔をしたAが倒れていた。

勇人くんがすぐに先生を呼び、慌てた様子で駆けつけてくれたときには、止まってこそいないものの、Aはほとんど呼吸ができていなかった。


青「やだ…よ…。Aっ…」

黒「大丈夫…だよ、A…」


“強いから”


とは、言えなかった。

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美紀 - 移行おめでとです最高ですコロナウイルスと熱中症に気をつけてくださいね (2020年9月7日 14時) (レス) id: 8204dae0fb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かん。 | 作成日時:2020年7月14日 17時

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