無限の未来 4th season (ページ4)

今日:5 hit、昨日:16 hit、合計:157,679 hit

154話ページ4

「ふふっ…よかった…。兄ちゃん、まだおった」

ちょっとだけお腹の辺りが重たい感覚で目が覚めると、勇人兄ちゃんがわたしの手を繋いでくれたままベッドに突っ伏して寝ていた。

重たいお腹の正体は、しっかりとお腹のあたりに乗った、もう片方のあったかい兄ちゃんの手。

日本を代表するようなプロ野球選手が、日本シリーズの移動前にこんなことしてるなんて知られたら、日本中の人はどう思うのだろう。

そんなことが、ふと頭をよぎった。

けど…今だけは、プロ野球選手じゃなくて…。

勇人「ん…なんや、起きちゃったん…？まだ、時間結構早いやろ…」

「ん。ちょっと…なんか、ね…」

勇人「どしたん。またしんどなった…？」

「んーん。それは…だいぶ、マシになった」

“マシになった割に、まだ熱はずいぶん高いなぁ～”って言いながら、汗でビチョビチョになった私の髪を、躊躇いもなくかき分ける勇人兄ちゃん。

まだそんなに熱があるなんて、思わなかった。

きっと、体は重たくても、心がいつもよりほんの少し軽くなった、そのおかげ。

紛れもなく、兄ちゃんがそばにいてくれるから。

勇人「なした、そんな見つめて」

「兄ちゃん…っ…ｸﾞｽﾞｯ…」

勇人「ん…思いっきり、泣き。兄ちゃんおる間に、全部吐き出しとき」

「…っ、ふっ…ぅ…っ、ｹﾎｯ…んっ…」

勇人「しんどいな…。ごめんなぁ、いつも居ってやれたらええんやけど…。宮城、終わったらこっちおるから。したら毎日でも、来てやれるからな」

もうすぐシーズンが終わるといえ、秋季キャンプもある。

勇人兄ちゃんの負担にはなりたくない。

「兄ちゃん…？」

勇人「んー？」

「Aな…勇人兄ちゃんのこと、大好き。でも、野球選手の坂本勇人も、好き」

一瞬驚いた顔をした勇人兄ちゃんだったけど、すぐにクシャクシャの笑顔になった。

勇人「ほんなら、野球選手の時は、もっともっと頑張らなあかんなぁ。もっと活躍して、いっぱい喜ばせたる。でもな、ここにおる時は、俺、Aだけの兄ちゃんやからな？」

「…ありがと」

翌日の夕方までいてくれた兄ちゃんは、そのままの足で宮城へと旅立った。

勇人兄ちゃんが置いていった野球ボールには、坂本勇人のサインと“一緒に闘おう”の一言が刻まれていた。

それだけで…。