105話 ページ5
【佐野】
「佐野ぉ〜」
佐野「おうっ。あれ？お前なんか肌白くなった？まっくろくろすけ卒業じゃね？」
「…うるさい。ただ顔色悪いだけですぅ」
関東大会が終わって数日、久々に少し長めのオフができたから、Aが入院して初めて病院へ来た。
メールや電話でやりとりはしてても、顔が見れないから正直心配しかしてなかった。
本人にはそんなこと絶対に言うわけはないけど。
そうして久々に会ったAに、この1年間で肌に染みついたはずの小麦色は、面影すら見られなかった。
「1年生、そろそろ部活慣れてきた？」
佐野「うん。俺らみたいに仲間割れもしてないし、雰囲気も悪くない感じかな」
「…肝心の、みんなは？喧嘩してない？皆んなマジですぐ喧嘩するんだから、うちの男どもは…」
佐野「うるせぇなぁ」
いつもそうだ。
電話したってメールしたって、こいつはいつも部員のことを心配しているし、それは誰が連絡を取ったって変わらなくて。
顔を見なければ、文字や声だけでは、その裏になにを隠しているかなんて、分かってやることができないことが、すごくもどかしかった。
だから、貴重なオフだったとしてもここへ来た。
ちゃんとこの目で、自分の感覚で確かめたかったから。
Aの、強さや優しさだけじゃなくて、もっと弱いところも、抱え込んだ悔しさも、ちゃんと自分で会って、話して、確かめたかった。
「会いたいなぁ…みんなに」
佐野「…みんな？」
「ん、そう。皆んなに、会いたい。…足が、あるうちに」
佐野「…。俺、口固いよ…？」
これまでずっと、ストレートにもの言い合ってきて、ただ思ったことをお互いぶつけてきた。
そんなAに対して、今はいつもみたいにストレートな言葉をかけたら、なんだか傷つけてしまいそうで。
でも、だからといって気の利いた言葉なんてかけてあげられないし、俺には今どうしたら良いのか、正解がわからない。
でもきっとAは、そんなこともわかってて、それでも皆んなに会いたいと、手術を受ける前の姿で会いたいんだと、ちゃんと思ったことを言ってくれたんだと思う。
それが証拠に、自分は口が固いと伝えた俺を見て、Aは一瞬だけキョトンとして、また俺の顔見て笑って、泣いた。
“バカだなぁ、佐野は…”なんて言いながら。
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かん。(プロフ) - 美紀さん» ありがとうございます！！！ (2020年5月30日 11時) (
レス) id: bd45e6ad2b (このIDを非表示/違反報告)
美紀 - 移行おめでと更新大変だと思います頑張ってください応援していますコロナウイルス流行ってるので気をつけてくださいね (2020年5月27日 12時) (レス) id: 8204dae0fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かん。
| 作成日時：2020年5月20日 22時
