133話 ページ33
もうこの際、誰に何を思われたって、どうだっていいじゃないか。
というより、初めからそんなことは問題じゃなかったというか、どうでも良かったんだと思う。
私にとって一番大事なのは、いま、ここをみんなと生きることであって、それが叶うのなら、自分がどんな姿だったって、関係ない。
だって、これが今の私であって、みんなと一緒にいたいと願っているのは、他でもない“今の私”なんだから。
そう思ったら、義足を外して人前に出ることなんて、どうでもよくなっていた。
だって、いまここにいるのは…左脚のない私なのだから。
それが、私なのだから。
無理矢理そう思ったのかもしれないけど、それでも。
佐野「おかえり。お前がいない間に、追加で2点取っといたわ」
なんて、ぶっきらぼうにボソッと言いながらVサインを向けてくる佐野は、一瞬だけ私の左足を見て、目をまん丸に開いたけど、直ぐに笑ってグッドサイン。
周りを見れば、ベンチにいる他の先輩たちも、グッドサインをむけてくれた。
みんな、驚いたに決まってるのに。
なにか言われたって仕方ないし、なんなら、今日はもうここにいることが許されなくたって仕方のないことなのに、なにも言わず、一緒に戦わせてくれる。
「みんな、最高ですっ！」
大樹「っと、あぶねぇっ。もー、転んで外さなきゃいけなくなったのに、また転びそうになってどうするんだよ…」
「すいません、つい…はしゃぎすぎちゃって…」
気づけば試合は、もう2/3が終わっていた。
どんなにこの時間が永遠に続いて欲しいと願ったって、どんなに悪あがきをしたとして、泣いても笑っても、私にとっての今年の甲子園は、あと3回。
尊敬する、大好きな先輩たちと試合ができるのも、あと、この試合で残された、たったの3回分だけ。
時間にしたら…本当に短い時間。
佐野「泣くな。まだ、早い」
「堪えてるもん…っ」
佐野「その顔、映るぞ。テレビ」
「んなこと…考えとる余裕、ない…っ」
ケラケラ笑って、乱暴に頭を撫でてくる佐野。
大樹「A、生の試合。俺たちの姿、目に焼き付けろ。絶対ぇ忘れんじゃねぇぞ。一緒に、戦うぞ。最後まで」
高校野球は儚い。
いつかそんなフレーズを聞いたことがある。
本当にその通りだ。
一瞬の夢。
でも、一生焼き付ける。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 208人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かん。(プロフ) - 美紀さん» ありがとうございます！！！ (2020年5月30日 11時) (
レス) id: bd45e6ad2b (このIDを非表示/違反報告)
美紀 - 移行おめでと更新大変だと思います頑張ってください応援していますコロナウイルス流行ってるので気をつけてくださいね (2020年5月27日 12時) (レス) id: 8204dae0fb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かん。
| 作成日時：2020年5月20日 22時
