132話 ページ32
【樹】
聖「おいっ、おい、なぁ！おい！樹っ！Aがっ…！」
青「え…」
実家に帰るなり、テレビで弟と甲子園を見ていた聖があわててリビングから飛び出して、急に俺を大きな声で呼んできた。
よく分かんない急な効果の焦り具合に、なんだよ…なんて思いながらも、呼ばれた声の最後になんとなく聞こえてきた“Aがっ！”の言葉に反応して、リビングに急いだ。
テレビに映っていたのは、片足でベンチに座る、女子マネージャーの姿。
青「え、なんで……。なんで義足外してんの？なんで片足でベンチにいるの？え、どういうこと？」
聖「いや、わかんねぇ。最初は普通に義足つけてたんだけど…。さっきからしばらく姿が見えなくなったと思って、整備とその表かな。終わって帰ってきたら、義足外れて片足になってたんだよ」
青「…けが、した……とか？」
聖「いや…だとしても、だろ。それならもう…」
青「Aだもん。出るって、言うと思う」
弟から携帯を借りて、聖と2人で、事務所からはそれなりにやんわりと禁じられている“エゴサ”とやらをしてみる。
Aの高校の愛称を入れたら、次々と出てくるA関連の検索予測。
“三高 マネージャー”
“三高 片足”
恐る恐る、検索の枠に、Aの名前を入れてみた。
“坂本A 義足”
“坂本A 甲子園 片足”
〈あれって、ジャニーズJr.の坂本Aちゃんよだよね。義足…？〉
〈甲子園見てて、久々に顔見たと思ったら坂本A、片足。義足なんだ…このままJr.は引退するのかな〉
溢れるA関連の言葉たち。
目に入るのは、マイナスな言葉ばかり。
でも…。
聖「きっと、人を惹きつけるんだろうな…。Aの、必死に頑張るあの姿は」
青「なに、それ。どういう…」
聖がそう言って見せてくれた言葉の中には、俺が見落としてしまった温かい言葉もたくさんあった。
片足がない自分の姿を晒すことで、嫌な注目をされることは、きっとA自身が一番分かってるだろう。
それでも義足を外して、ベンチに戻ったA。
きっと彼女はそのリスクを取ってでも、今日、あの場にいることを選んだんだと思う。
…自分で。
聖が見せてくれた画面に溢れたのは、必死に夢を追うAへの、ファンからの讃頌と応援の言葉だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 208人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かん。(プロフ) - 美紀さん» ありがとうございます！！！ (2020年5月30日 11時) (
レス) id: bd45e6ad2b (このIDを非表示/違反報告)
美紀 - 移行おめでと更新大変だと思います頑張ってください応援していますコロナウイルス流行ってるので気をつけてくださいね (2020年5月27日 12時) (レス) id: 8204dae0fb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かん。
| 作成日時：2020年5月20日 22時
