130話 ページ30
【大樹】
大樹「A、どした？…もしかして、左足痛むの？」
「ん…いや…。だい、じょぶです…このくらい、平気、なんで…っ」
大樹「ダメだ。少しでも痛みあるんだったら、裏行こう。整備の間だけでいいから」
まだ完全に義足に慣れていないAは、長時間義足をつけていると痛みが出るというのは、甲子園に来る前から聞いていた。
でも今は、本人が思ってたよりもだいぶ早く、本人も予想外なタイミングで、その痛みが襲ってきているみたいだった。
だから少しでも義足を外したりできれば楽になるんじゃないかと思って、ダグアウトへ行くよう促すんだけど、なぜだかそれを、断固として嫌がっている。
亜嵐「A、このまま痛みに耐え続けるんだとしても、しんどいのはお前だぞ？」
「大丈夫っ、大丈夫ですから。だから、だから…どうしても…ここに、いたい…。いさせて、ください…っ」
亜嵐「A、ダメだ。大樹と、裏行け。この回だけでいいから。薬が効いてきたら、戻ってきていいから。ベンチにいるメンバーは、全員が試合に集中できなきゃダメだ。記録員も例外じゃない」
普段はAにどこまでも優しいくせに、今日ばかりはと強く止めようとする亜嵐の真剣な眼差しに観念したのか、半ば渋々とダグアウトに向かうA。
でも、その途中で足に力が入らなかなってしまったのか、あと少しのところで上手く歩けなくなってしまい、崩れ落ちるようにその場でバランスを崩した。
幸い、なにがあってもいいようにすぐそばについていて、体が傾いた瞬間に慌てて支えたから、間一髪Aは転ばずに済んだけど…。
「大樹さん…薬、その…ベンチの…カバンに、入れてて。すみません、取ってきてもらっていいですか…」
大樹「ほんとに…我慢しすぎ」
ダグアウトで義足を外せば、驚くほどに真っ赤になった左足の接合部。
どうやら俺らの見ていないところで、義足をはめたまま、少しバランスを崩して、小さな段差で足を踏み外してしまっていたらしい。
それでも頑なにベンチを離れたくなかったのは、きっと、勝っても負けても、Aにとって今日が俺たちと参加できる最後の試合だから。
少しでも長く、先輩たちと一緒にいたい…そう言って涙を流した、悔しそうなAの言葉に、不覚にも泣いてしまった。
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かん。(プロフ) - 美紀さん» ありがとうございます！！！ (2020年5月30日 11時) (
レス) id: bd45e6ad2b (このIDを非表示/違反報告)
美紀 - 移行おめでと更新大変だと思います頑張ってください応援していますコロナウイルス流行ってるので気をつけてくださいね (2020年5月27日 12時) (レス) id: 8204dae0fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かん。
| 作成日時：2020年5月20日 22時
