128話 ページ28
【佐野】
正直、普段の自分なんて忘れてしまうほどに、緊張をして体も心もガッチガチだった。
甲子園の舞台で、初めてのスタメンを任されたことへのプレッシャーに、全然余裕、なんて顔を見せていた自分はどこに消えてしまったのか。
その結果、一打席目は情けないほどの散々な打席になってしまって。
遊び球でしかないような明らかなボールに立て続けに手を出して、結局簡単に打ち取られてしまった。
佐野「…っし」
「んー…」
ベンチに戻ると、俺たちの情けない打席を見ては、何度もそのプレーに首を傾げて、手元のスコアブックと睨めっこするA。
肩脇に置いたこれまでの戦歴を記録し続けたノートとスコアブックを、ペラペラとめくりながら、一人でずっと、難しい顔をしている。
相手の攻撃も二巡目に入り、守備につけばジワジワと押し寄せては離れることのない、苦しい展開。
それでも耐えるように全員でゼロに抑えることで、ただ精一杯な時間が続いていた。
亜嵐「多分、しんどいのは向こうも同じ。いいか？絶対突破口はあるはずだから。よく見ていけよ…」
そんな亜嵐さんの言葉を受け、先頭が四球で出た。
続く大樹さんも、相手のエラーがらみで出塁。
これまでになかった、願ったり叶ったりな展開に、ベンチもスタンドも今日一番の盛り上がりを見せているのに、その波に乗ることのできない俺。
このままだと、きっと俺に回ってくる…。
脳裏には、さっきの情けない凡打をしてしまった打席がフラッシュバックして、いいイメージが全く描けない、感じたことのない感覚。
この展開で、さっきみたいなことになったら、マジで終わりだ…。
プレッシャーと、自分への情けなさと、思うようにプレーできないイライラとで、もう、感情の整理がつかない。
そんなマイナスな気持ちを抱えたまま、ネクストに向かおうとした時だった。
「佐野…次の打席、半歩だけ後ろに立って」
どういうことかよくわからず、さっき彼女がそうしていたように首を傾げれば、“いいから、半歩後ろ！”ともう一度同じ言葉が強く繰り返された。
静かにバットを持ち上げ、いつも通りゆっくり打席に向かう。
ルーティンにしている3回のジャンプをして、ゆっくりとバットを構える。
そして、半信半疑で…半歩だけ、後ろに下がった。
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かん。(プロフ) - 美紀さん» ありがとうございます！！！ (2020年5月30日 11時) (
レス) id: bd45e6ad2b (このIDを非表示/違反報告)
美紀 - 移行おめでと更新大変だと思います頑張ってください応援していますコロナウイルス流行ってるので気をつけてくださいね (2020年5月27日 12時) (レス) id: 8204dae0fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かん。
| 作成日時：2020年5月20日 22時
