126話 ページ26
【亜嵐】
亜嵐「その足が震えてるのは、力が入らないのか…それとも、緊張か」
「ふふっ…どう、でしょう…。分かんないです」
亜嵐「大丈夫、支えてるから。…頑張ろう」
最後の夏。
負けたら終わり。
そんな日々を超えて、たどり着いた、死に物狂いで勝ち取って、ようやく戻ってきたこの場所。
Aの緊張をほぐしてやるつもりでそんなことを言いながら、俺もまだ緊張が解けずにいた。
憧れや、夢見ただけで来られるはずのないこの場所に立つことの意味も、辿り着いた先の思いも、一度経験したからこそ、余計にって思いもある。
何度来ても、ここは慣れる場所ではない。
「フワフワしてます…。すごく…フワフワしてる。夢みたい…。でも、上手く言えないけど…」
亜嵐「A、ありがとな。戻ってきてくれて」
「えっ…」
亜嵐「待ってた。待ってたし…信じてた。絶対、お前と…ここに立つって、決めてた。たとえお前が、どんな姿だったとしても」
「…っ！…受け入れてもらえて、本当に…幸せです。勝ちましょうね、亜嵐さん…！」
スッと静かに突き出された拳は、細くて小さかった。
冬の厳しさに耐えて、一緒に乗り越えて、過ごしてきたあの時とは違っている、少し頼りなささえ感じてしまうそれは、まるでAらしくなくて。
でも、そんな弱くて、脆くて、頼りない姿さえも隠さず見せてくれるそれが、今のAの全てな気がした。
そんな彼女に差し出された小さな拳に、自分のそれを突き合わせるんじゃなくて、そっと両手でその拳を包み込んでみたんだ。
それだけで、誰から受け取るよりも、強くて、この上ないパワーがもらえたような気がしていた。
亜嵐「最後まで…ちゃんと、ついて来いな」
Aの前では、情けない姿もたくさん見せて、頼りない姿を何度も晒した。
キャプテンになってからは、特にそう。
それでもいつだって笑い飛ばして、支えてくれた、たった1人のマネージャー。
Aがいなくなってしばらくは、俺はまた、元の頼りないキャプテンに戻ってしまった時期もあった。
でも、Aが安心して戻ってこれるように、必死で目指した甲子園。
「一生、ついていきますよ。キャプテン」
そう言って笑うマネージャー。
絶対に、勝つ。
勝って、Aをもう一度送り出す。
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かん。(プロフ) - 美紀さん» ありがとうございます！！！ (2020年5月30日 11時) (
レス) id: bd45e6ad2b (このIDを非表示/違反報告)
美紀 - 移行おめでと更新大変だと思います頑張ってください応援していますコロナウイルス流行ってるので気をつけてくださいね (2020年5月27日 12時) (レス) id: 8204dae0fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かん。
| 作成日時：2020年5月20日 22時
